第69回 大学・大学入試情報コラム

2024年1月13日・14日に実施された現行課程最後の「共通テスト」。能登半島地震の直後も、大きな混乱がなく終わった。国語、地理B、生物、英語リスニング等の易化で平均点も上昇。その影響は? 

2024年2月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

「共通テスト」は地震後もトラブルなし
 4回目となる2024年度「大学入学共通テスト」は1月13日・14日、能登半島地震の余震が続く中ではあったが、試験会場等では大きな混乱もなく終了した。
 大学入試センターによると、カンニングペーパーの使用など計4件の不正行為が確認され、4人が失格となった。なお、不正行為者は規定により、全科目の成績が無効となる。
 また、同センターによれば、今回の「共通テスト」の志願者数49万1914人のうち、教科を受験した割合(受験率)は、地理歴史・公民80.4%、国語88.1%、外国語(リーディング・筆記)91.6%、英語(リスニング)91.0%、理科①27.4%、理科②42.7%、数学①70.0%、数学②64.7%だった。因みに、現役志願率は前年比0.1ポイント増の45.2%(41万9534人)で、過去最高となった。

「平均点」がアップし、強気の出願か?
 2024年度「共通テスト」の特徴は、過去3回の出題形式・傾向を踏襲したことだ。基本的には、複数の資料を分析して思考力や判断力を測る出題であり、この傾向は各教科で目立った。会話文形式、グラフや表等に基づく複数資料の考察など、受験生からは「時間不足」の声が、今回も聞かれた。
 入試センターが1月19日に公表した中間集計(受験者数45万6332人)の主要科目の平均点は、国語(平均点:58.25点)、世界史B(60.28点)、地理B(65.74点)、倫理・政経(61.26点)、化学(54.77点)、生物(54.83点)、地学(56.67点)、英語リスニング(67.24点)で、これら8科目が対前年アップ。
 一方、日本史B(56.27点)、現代社会(55.94点)、倫理(56.44点)、政治・経済(44.35点)、数学Ⅰ・A(51.38点)、数学Ⅱ・B(57.74点)、物理(62.97点)、英語リーディング(51.54点)で、同じく8科目が対前年ダウンした。アップ幅の方がダウン幅より大きかったため、総じて前年より平均点がアップする要因となった。
 また、2024年度は得点調整対象科目の得点差が20点未満であったため、今回は得点調整がなかった。因みに、共通テストの最終結果などは2月5日に公表される。

国語:「実用的な文章」の出題はなし
 国語の問題を見て、驚いたのは「実用的な文章」を読み解いて答える問題が出されなかったことだ。共通テスト導入前にモデル問題例が2回公表され、試行調査も2回行われた。その流れで、出題されるのでは、と予想されたがなし。これでは、新課程になっても「文学国語」中心で、「論理国語」の出題はないかも? 早計だ!
平均点:中間集計での国語の平均点は116.50点(58.25点)で、前年105.74点より10.76点(5.38点)アップした。
大問数:4問は変化なし。 ジャンル:1.論理的文章・2.文学的文章・3.古文・4.漢文
字数:前年並。 分析:「推敲力」「鑑賞力」を問う出題があり、発展的な思考力が問われた。また、小説が取り組みやすかった。

英語:分量・語数とも増えて難化傾向
 英語リーディングの試験が終わった直後から、「難しかった」の声が流れた。問題の分量も単語数も多かった。英単語数は年々増加しているらしい。2021年第1回共通テストのワード数は約5500語、22年・23年は同じで約6000語、24年は約6300語になったというのだ。
 問題数は大問6で変わらないが、ページ数は「40ページ」と過去最多。また、内容は英語の小説様式で、問題の内容もかなり難化した。
平均点:英語リーディングは、平均点が51.54点(前年:53.81点)で、前年より2.27点ダウン。やや難化。また、リスニングは67.24点(前年:62.35点)で、4.89点上がった。全体として、出題傾向に変化はないが易化した。
【リーディング】大問数:6問で、前年と同じ。 ワード数:6300語。 ジャンル:チラシ、案内、レビュー、ブログ、学校新聞、物語文、論説文など。 分析:多様な問題が出題された。英語の小説のような内容で難しい。
【リスニング】大問数:6問。 語数:総語数1550語、質問590語。 分析:正確に聴き取り、整理する技術も求められる。

「出願」に当たっての注意ポイント
《出願に向けた要点》共通テスト終了後は?
 自己採点業者が5教科7科目文系型・理系型の平均点等を公表。各データとも、前年より平均点がアップした。それらを基に、受験生は大学を決めて出願する。
 自己採点の結果によっては、私立大学の「共通テスト利用入試」を活用するのも1つの選択肢だろう。因みに、共通テストを入試の合否判定に利用する国公私立の大学や短期大学などは計864校で、前年から6校減った。
《2024年志望動向》学部・学科の選択は?
①女子も「法」や「経済」などの実学系へ
②「建築」「応用化学」に女子が進出へ
③理系では「理」「農」が増加傾向に
④「外国語」「国際」に回復の兆し
⑤「データサイエンス」は過剰傾向に
⑥「生活科学」の人気がダウン気味に
⑦「薬」は志望者が減少の方向へ
⑧看護・医療系は横ばいの傾向に  など
《2025年新課程入試へ》
 2024年入試で、過年度卒業者はどれくらいになるのだろうか? 
 また、大学数の多い首都圏では、年内入試の合格者の増加で、「共通テスト」の志願者が減少する傾向にある。新たに「情報Ⅰ」が加わる2025年度新課程「共通テスト」は、どのように推移するだろうか。

本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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