第62回 大学・大学入試情報コラム

大学の理工農系の拡充がスタート。文科省は支援事業の対象として118校を選定。また、2025年度共通テスト出願はオンライン化、2023年度共通テスト外部評価は?

2023年8月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

文科省、理系新設・拡充118校を選定
 社会生活でのIT化が世界の潮流より遅れる日本は、大学の理工農系分野の拡充を進めている。文科省は7月21日、3000億円基金支援事業の対象として118大学等を公表した。
 支援事業は大別すると2つで、①理工農系学部の新設・再編や定員増は中央大・関西大など67校、②高度なデジタル人材育成は東京大・大阪公立大・北里大など51校を選定。各大学は、3年以内に設置の手続きを進める。
 女子大の学部新設では、大妻女子大(統計・データサイエンス学部)、日本女子大(建築デザイン学部)、椙山女学園大(情報社会学部)、京都女子大(食農科学部)、武庫川女子大(環境共生学部)、ノートルダム清心女子大(情報デザイン学部)、安田女子大(理工学部)など。
 また、2024年度入試で目立つ、理系学部・学科での「女子枠導入」なども、一連の動きと言えよう。

2026年共通テスト出願はオンライン化
 大学入試センターが2025年度新課程共通テスト(2026年1月実施)から、「出願の原則オンライン化」方針を、7月5日までに決めた。今後はシステム上に受験生が個人のページを作り、受験科目などを登録する形となり、訂正などが容易になる。さらに、検定料もオンラインで決済できるようにするという。
 また、文科省は7月14日の有識者会議で、少子化の影響を踏まえた2040~50年の大学入学者数の推計値を公表。それによれば、2040年は2022年に比べて12万人以上減の約51万人、50年は49万人台になると予想した。現在の大学の入学定員の総数(2022年度約62.6万人)より約10万人減る。2040年代の大学定員充足率は、80%を割る年もありそうだ。

2023年度共通テストの外部評価は?
 大学入試センターは6月30日、2023年度共通テストの外部評価の結果を公表した。毎年、第1:高校教科担当教員の意見・評価、第2:教育研究団体の意見・評価、第3:問題作成部会の見解──の3部構成で公表されている。2024年度の共通テストを予想するには、第1・2の意見・評価に対する第3の見解が、出題の方向性を示唆することになり、注目されている。
 例えば2023年度共通テストでは、「生物」の難易度が「適切でない」として最低評価の「1」「2」がついた。確かに生物は、2年連続で過去最低を更新した。これに関してセンターは「真摯に受け止める。良質で適切な問題作成に努めていきたい」としている。これによって、生物の易化が予想される?

共通テストの「外部評価」は毎年実施
 外部評価は全30科目について、「難易度」「出題のねらい」などの項目ごとに適切かどうかを「4(あてはまる)」~「1(あてはまらない)」の4段階で評価している。
 この「2023年度問題評価・分析委員会報告書」(6月30日)は資料が膨大で、このスペースではとても「国語」と「英語」について紹介できない。詳細は、大学入試センターのホームページで、ご確認いただきたい。ここでは、「総括的な評価」のポイントを紹介。

2024年共通テスト国語は変化少ない

【第1】教科担当教員の意見・評価
「内容・範囲」「分量・程度」「表現・形式」をチェック。いずれの大問においても、本文が平易で適量であり、難易度も適切であった。すべての大問において、バランスよく出題されるよう工夫していただきたい。
【第2】教育研究団体の意見・評価
「問題の程度・設問数・配点・形式」について、細かくチェック。問題冊子全体で50ページ超というのは、分量がかなり多い。
【第3】問題作成部会の見解
問題文の選択、分量、形式、設問のあり方、難易度等について、概して肯定的な評価を受けた。今後も生徒の学習の過程を意識した問題作成に努めたい。また、受験者の思考力・判断力・表現力を測れる問題にしたい。

2024年共通テスト英語Rは前年並み
《リーディング》

【第1】教科担当教員の意見・評価
「内容・範囲、分量・程度、表現・形式」について評価。全体として、英語教育改革の方向性を反映しており、題材が多岐にわたり適切であった。
【第2】教育研究団体の意見・評価
様々な資料や図表を通して英文を読み、知識・技能や思考力・判断力・表現力等を問う内容となっており、学習指導要領における目標を反映した出題となっている。
【第3】問題作成部会の見解
各方面からおおむね肯定的なコメントが得られた。共通テストでは、より思考力・判断力・表現力等を測ることができる質の高い問題を作成することが課題となっている。大問ごとにCEFRのA1からB1レベルまで難易度を設定し、幅広い受験者層に対応できる問題構成にしている。

《リスニング》(スペースの関係で縮小)

第1】~【第3】ともに
平均点62.35点(前年59.45点)で2.9点アップしたことに言及。問題の安定性や慣れの指摘もあった。リスニングは、2024年度も大きな変化はなさそうだ。

「ホームページ」で、ご確認願いたい。

大学&教育ウォッチャー 本間 猛
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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