第63回 大学・大学入試情報コラム

2024年度入試は2025年度新課程入試を回避するため、現役合格を目指す受験生が増加。また、難化予想の「新課程共通テスト」は? 作題の体制は?

2023年9月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

2024年度は現行課程「最後の入試」
 秋になれば、2024年度入試の受験校の絞り込みを行う。その時に問われるのが、「現役合格するぞ」の本気度だ。2025年度からは「新課程入試」がスタートするため、移行措置が取られるものの、負担増が予想されている。
 また、国立大がセンター試験時代から受験生に課してきた「5教科7科目」に2025年度からは「情報Ⅰ」が加わり「6教科8科目」となる。ところが、地域によっては指導者がいないとか、各大学が「情報Ⅰ」をどう扱うか検討中とかで、曖昧な点が多い。1年以上先の話だから、その内に落ち着くだろうが・・・。
 これに不安を抱く受験生は、ランクを下げてでも現役合格できる大学を選択する。一方で、初期志望を貫き、万が一移行措置になっても構わないとする受験生もいるはず。いずれにしても、選択に迷う入試になるだろう。

2025年度新課程は「情報」で負担増
 ここで、2025年度新課程入試になると、現行の「共通テスト」がどのように変更されるか、概略について触れてみよう。
《出題教科・科目》 現行の6教科30科目から7教科21科目へと再編する。

【新設の「情報」】 教科「情報」が新たに加わる。「情報」は、新課程で必修化された科目「情報I」から出題し、プログラミングなどを問う。ただし、移行措置として現行課程で学んだ、浪人生向けの科目も出題する。
【再編の「地理歴史・公民」】 現行の10科目から6科目に再編。「地理総合、地理探究」「歴史総合、日本史探究」「歴史総合、世界史探究」「公共、倫理」「公共、政治・経済」「地理総合/歴史総合/公共」の6科目。(1科目と2科目を選択。出願時に科目数を申し出る)
【数学】 ①「数学Ⅰ、数学A」「数学Ⅰ」 ②「数学Ⅱ、数学B、数学C」(数学BとCについては、数列・統計的な推測、ベクトル・平面上の曲線と複素平面の4項目に対応した出題とし、うち3項目を選択解答する)

「国語」「理科」「英語」は大枠変化なし
 比較的に変更の少ないのが、次の3教科。

【国語】 分野別の大問数・配点数は、近代以降の文章が3問110点、古典が2問90点。
【理科】 出題科目は現行と同じ。
【外国語「英語」】 [リーディング]と[リスニング]の構成で、現行と同じ。

《得点調整》 得点調整は一定の受験者数がいる科目を対象とするが、2025年から新設する「情報I」と浪人生向けの「現行情報」は、受験者数にかかわらず、調整の対象とする。

大学は5月頃作題着手、ミスは最悪
 新課程入試のスケジュール等が決まってくる中で、注目されているのが「大学入試センター」はどのような体制で作題などを行っているのか、調べてみた。
 作題関係者は「入試問題は、大学から高校生に向けた、身につけてほしい学力を伝えるメッセージだ」と言う。高校生にとっては教材でもあり、試験問題は大学での勉強や研究につなぐ役割も果たす。
 一般的に入試問題の作成は、5月頃に着手。大学内に作問チームができ、出題範囲、難易度等を、高校の教科書を参考に決める。問題案は秋口にまとめ、字句・正解等を点検し、印刷して翌年2月の試験日まで保管する。
 大学の教員にとって、作題は高校の教育内容を熟知する場であり、ミスは許されない。出題ミスがあると、「不合格とした受験生に追加合格を出す」「受験生への謝罪」「他大学や予備校に支払った学費の弁償」など、重大な問題に発展するため、責任は重い。

共通テストは大学教員ら約700人関与
 では、「共通テスト」の場合は、どんな体制で作られているのか。現行6教科30科目の問題を、「本試験用」と「追試験用」の2セットを作るため、2年間かけている。
[1年目]:試験問題案の作成・推敲・点検
[2年目]:校正作業・問題冊子の印刷(~11月中旬)し、翌年1月の試験日まで保管する。
 次に、「共通テストの作問・点検体制」に触れてみよう。以下のように、全国の大学教員ら700人以上が関わっている。

【問題作成委員】(約500人)
主に大学教員。1科目あたり20人前後。任期は原則2年。
【点検担当】(約230人)
①大学教員が最新の研究など、専門的な観点で点検(約150人)
②科目間で出題の重複がないかなど、総合・横断的に点検(約30人)
③高校関係者が、難易度や内容が高校で学ぶ範囲から外れていないか点検(約50人)

 受験者数50万人にふさわしい、「共通テスト」作成体制の陣容である。
 「2025年度新課程入試」の情報は、機会あるごとに増えるだろうが、2024年の6月・7月に公表される実施要項などがポイントになる。受験生は、ホットな情報を入手しながら準備をし、2025年の1月本番に臨みたい。
《新課程入試スケジュールのポイント》
★2024年:共通テスト実施要項公表(6月)
    各大学の選抜実施要項公表(~7月)

大学&教育ウォッチャー 本間 猛
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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