第67回 大学・大学入試情報コラム
2024年度「年内入試」もほぼ終了し、「共通テスト」と「一般選抜」を残すばかり。話題は2025年度「新課程入試」に移りつつある。現時点での、2025年度入試のポイントをチェックしてみた。
2023年12月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
2025年度「新課程入試」が注目される
職員室、進路指導室等の話題が、「新課程入試元年」に向かっていると聞いた。そこで、現高2生が挑戦する、「2025年度共通テスト」について触れてみることにした。
「共通テスト」では新たに「情報」が加わり、現行の「6教科30科目」から「7教科21科目」へ再編。受験生の負担は、心理面も含めて増加することが予想されている。
ご存知のように、国公立大学の個別(2次)試験、分離分割方式(前期・後期・中期)など、「入試システム」「選抜方式」等に変更はない。また、私立大学の「共通テスト利用入試」も、現行のように実施される。
今回は、文科省・大学入試センターが7月21日までに公表したデータ等をもとに、「共通テスト」の変更点をチェックした。
「共通テスト」は新しく「情報」が追加
【2025年度「新課程共通テスト」変更点の概要】
*本試験:2025年1月18日(土)、19日(日)
*新教科:「情報」
*出題方法:地理歴史、公民、数学、理科などは、新たな出題方法
*問題冊子:地理歴史、公民→パッケージ化、数学及び情報→新旧課程とも同じ冊子に掲載など
*解答用紙:新旧等で変更あり
*得点調整:実施条件・方法等に変更あり
大枠の変更点は上記のようになるが、2025年度は2024年度以前の既卒生を対象に「経過措置」がとられ、旧課程問題が用意される。
さらに、2025年度では、「地歴公民」「理科(専門科目)」に加えて、「数学Ⅰ」「数学Ⅱ」「情報」が「得点調整」の対象となる。
ここで、新教科「情報」について説明する。
★「情報」⇒新指導要領で必修化された科目。「情報I」から出題し、プログラミングなどを問う。60分のマークシート方式になると見込まれている。
また、「情報」の配点比率が標準計1000点のうち100点(10%)では多過ぎると、各大学では圧縮した配点を設定している。
「国語」は10分延びて現代文が3問
大学入試センターは、「従前の問題作成方針を引き続き重視しつつ、趣旨をより明確にし、新指導要領に対応。知識の質や知識・技能を活用する思考力・判断力・表現力等を問う問題の工夫を重視する」としている。
★「国語」⇒言語活動を重視し、多様な資質・能力を問うため大問を1つ追加。
【出題】国語は、「現代の国語」及び「言語文化」を出題範囲とし、近代以降の文章及び古典(古文、漢文)を出題する。
【問題数・配点】試験時間が80分から90分へと10分追加され、近代以降の現代文の問題が2題から3題に変更。全体の大問数も、4から5に増加する。現代文3問が110点、古典が2問90点(古文・漢文各45点)の配点になる。
「数学②」70分で選択問題が1問増
★「地理歴史、公民」⇒必履修科目を組み合わせた出題科目1科目と、必履修科目と選択科目を組み合わせた出題科目5科目の合計6つの出題科目から最大2科目を選択解答。1科目選択60分(100点)、2科目選択120分(200点)
★「数学②」⇒『数学Ⅱ、数学B、数学C』の1科目を出題し、試験時間は70分(10分増)。出題範囲に数学C、「ベクトル」と「平面上の曲線と複素数平面」が追加され、選択問題が2問から3問に増加する。数学①70分(100点)、数学②70分(100点)
★「理科」⇒従前の2つの時間帯(理科①と理科②)から1つの時間帯に変更。従前の「物理基礎」「化学基礎」「生物基礎」「地学基礎」の4科目は、『物理基礎/化学基礎/生物基礎/地学基礎』として1科目に統合。5つの出題科目から最大2科目を選択解答。1科目選択60分(100点)、2科目選択120分(200点)
「英語」は聞く・読む・話す・書くを評価
★「英語」⇒「リーディング」「リスニング」形式を通して、「聞く」「読む」「話す」「書く」を統合した言語活動を通して培った総合的な英語力を評価。
【出題】英語は「英語コミュニケーションⅠ」、「英語コミュニケーションⅡ」及び「論理・表現Ⅰ」を出題範囲とし、リーディング及びリスニングを出題する。受験者は、原則としてその両方を受験。
【配点】リーディング80分(100点)、リスニング30分(100点)
「試作問題」を分析して指導に生かす
大学入試センターは「2025年度共通テスト試作問題」を、具体的なイメージを共有するためとして、2022年11月9日に公表している。すでに、各教科で「試作問題研究」を実施した高校もあるようだ。
国語、英語の試作問題をチェック。今後の指導に生かしたい。
●国語⇒新しく追加される第3問の現代文では、図やグラフなどを関連させながら解釈させる問題となりそうだ。古典は、従来の方向を踏襲した問題が予想される。
●英語⇒聞く・読む・話す・書くなどを統合した言語活動が、問われることになる。総合的な英語力が評価される。
「試作問題」に目を通しても、「共通テスト」問題量の多さには驚かされる。特別な要約力が必要のようだ。
<参考>大学入試センター試作問題
令和7年度試験の問題作成の方向性、試作問題等 | 独立行政法人 大学入試センター (dnc.ac.jp)
本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任