第32回 大学・大学入試情報コラム

オミクロン株の拡大下で、2022年度「共通テスト」は実施。
2回目の「共通テスト」の平均点は、数学・理科等で大幅ダウン。
平均点が多くの科目で下がったが、その要因はどこにあったのだろうか? 

2022年2月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

前代未聞!東大近くで受験生ら刺傷
 コロナ禍が続く1月15日・16日、2回目となる2022年度「大学入学共通テスト」が実施されたが、15日朝8時半ごろに試験会場の東京大学近くの路上で、高校2年生が受験生ら3人を刺す事件が発生。前代未聞の入試となった。
 大学入試センターによれば、共通テストの志願者53万367人のうち、各教科を受験した割合(受験率)は、地理歴史・公民78.7%、国語86.9%、外国語(リーディング・筆記)90.8%、英語(リスニング)90.3%、理科①27.3%、理科②40.9%、数学①68.3%、数学②62.0%など。
 「オミクロン株」の急拡大等による病気、津波避難指示で受験できなかったなどを理由に、1月29日・30日の「追・再試験」を受けることを認められた受験生は、全国で1657人、前年に次いで過去2番目の多さとなった。

27科目中18科目で平均点がダウン
 知人の元高校教員によれば、第1日目の試験終了後から担当教科の問題を解いたり、正解確認・分析をしたりするのが恒例で、生徒の質問に答えられるように準備していたという。また、自己採点の推進業務等もあり、多忙だ。
 予想通りと言おうか、2022年度共通テストは難化し、「平均点」(1/21:中間集計2)が対前年で大幅にダウンした。英語受験者47万8936人の集計だが、最終ではないためダウンした科目名だけをあげると、国語~英語までの27科目中、18科目の平均点が前年を下回った。
 入試センターは1月21日、科目間の得点調整を行わないと発表した。因みに、共通テストの最終結果は2月7日に公表される。

数学:土俵にあがれない受験生多数
 1月21日現在、下げ幅が大きかったのは数学。数学ⅠA⇒22年平均点:37.96点(21年:57.68点)▲ダウン差19.72点、数学ⅡB⇒22年43.06点(21年:59.93点)▲16.87点。
 ダウンの要因を探ってみると――。数学は、思考力などを問う入試改革の趣旨に沿った出題が多く、また問題文の長文・国語化も加わり、数学の土俵にあがる前に時間を取られた受験生が多かった。数ⅠAは解答方針が立てにくい問題、数ⅡBは会話形式の問題等も見られた。2科目で36.59点もダウンした。
 また、理科②生物は平均点48.81点だったが、前年が72.64点と高かったために23.83点も下がった。因みに物理、化学も下がったため、理系の出願大学選定は迷ったかもしれない。

国語:文章や資料を結ぶ力を求める
 1月21日の集計では、国語も平均点が110.25点で前年117.51点より7.26点下がった。
 1問の評論は、「食べる」ことについて考察した2つの文章からの出題。2問の小説は、語句を問う出題はなかった。3問の古文は、本文が2つで、歴史物語『増鏡』と日記『とはずがたり』が出題された。4問の漢文は、七言律詩とその序文が出題された。問5は生徒のノートに基づく空欄問題。問6は、2つの文章を読んだ生徒が作成したメモの空欄を埋める設問であった。
 全体的には、前年以上に、複数の文章や資料を関連づける力が求められ、やや難化した。

英語:大問数・形式なども前年並み
 英語リーディング(集計:47万8936人)は、平均点が61.81点(前年:58.80点)で、3.01点アップ。また、リスニング(集計:47万7235人)は59.45点(前年:56.16点)で、3.29点上がった。英語は前年並みか、やや易化。
【リーディング】前年と大問数は変化なし。設問数は1問減少、マーク数は1問増加。また、総語数は約6000語で昨年よりも約500語増加した。全体として、解きにくい問題は少なかった。
【リスニング】全体の大問構成、読み上げの方式は昨年とほぼ同じ。大問6題からなる構成で、配点にも変化はなかった。
 入試センターは1月21日、共通テストの「段階表示換算表」も公表(HP)。スタナイン方式で9段階に分けられ、5段階に平均点が入る。自己採点結果と段階表示等も参考にしながら、得意科目の伸びや不得意科目の底上げを図りながら、2次試験での逆転を狙いたい。

不合格者にかける言葉は注意したい
 そうは言っても、受験では合否が冷徹に示される。「不合格だった生徒にどのように声をかけるか」はデリケートで、非常に難しい。
 受験生のケースやタイミングによって、かける言葉は違ってくる。「第一志望が不合格」「一生懸命勉強したのに、全部落ちた」等――。不合格の直後の場合は、「頑張っていたのに、残念!」などと、「共感を示す」ことが大事。また、浪人を決めている受験生には、「捲土重来を期す励ましの言葉をかける」ようにしたい。

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