第41回 大学・大学入試情報コラム
文科省が「学校基本調査(速報)を公表した。
少子化は改善されず、学生数は減るばかり。学費の大幅値下げが、
大学経営の起死回生となるか。学費は国立と私立でどれだけ違うのか?
2022年9月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
2022年度「高校生」は295万7000人
文科省は8月24日、「2022年度学校基本調査(速報値)」(5月1日現在)の結果を公表した。膨大なデータだが、同省のHP「統計情報」(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1419591_00007.htm)に掲載されている。今回は「数字」にこだわって、「教育情報」&「入試情報」を紹介することにした。
全国の小学生数は615万1000人、中学生数は320万5000人で、過去最少になった。また、高校に通う生徒数は295万7000人で、前年度より5万1000人も減少し、進学率が低かった1958年(昭和33年)より少なくなった。
学部の女子は120万1000人、45.6%
一方、大学に通う学生数は293万1000人で、前年度より1万3000人増加し、過去最多。18歳人口は減少しているが、進学率のアップや入学定員の増加等で学生数は増えたのだ。
そのうち、学部生数は263万2000人で、前年度より6700人増加し、過去最多となった。また、学部の女子学生は120万1000人で、前年度より4500人増加し、過去最多を更新した。結果として、学部学生に占める女子学生の割合は、45.6%(前年度同率)となり、過去最高を維持した。
大学院生数は26万2000人で、前年度より4700人増加した。また、短期大学生数は9万5000人で、前年度より7500人減少した。女子の4年制大学への志向が強くなったことで、短期大学の人気が落ちたのが要因だ。
日本の将来を左右する「少子化」は、2022年度も改善の兆しが見えない。このまま行けば早晩、「大学倒産」は避けられそうにない。
私立大「医学科」は学費がメチャ高い
現在、人気が高く、難関で高倍率な学部・学科と言えば、「医学部医学科」である。高いのは難易度ばかりではない、私立大「医学科」の学費はメチャ高いのだ。6年間で約4700万円の大学もある。高収入の医師の子弟が、後を継ぐケースが多いのはそのためだ。
因みに、国立大医学部医学科は6年制のため6年間でかかる学費は計350万円ほどなのだ。私立大との差が大き過ぎる。
多くの学生を求めて670万円ダウン
関西医科大は2022年6月24日、2023年度入学生より医学部学費を大幅減額すると発表。6年間の学費総額2770万円から670万円引き下げて2100万円にするとした。
私立大で学費が安い「医学科」を挙げてみると、1位:国際医療福祉大(学費:約1900万円)、2位:順天堂大(約2100万円)、次いで、慶應義塾大、日本医科大、東京慈恵会医科大などが2200万円台で続いている。これらの学費の状況を見れば、なぜ2100万円にしたかが理解できるというものだ。
私立大医学科の御三家といえば、国家試験の合格率が高い慶應義塾大、日本医科大、東京慈恵会医科大である。これらのレベルに到達できる、優秀な学生を多く集めたいという戦略だろう。関西圏では、学費3000万円台の大学が多いから、志願者を集めるかもしれない。
6年間の学費は国立大が断然有利!!
医学科の学費で分かったように、国立大と私立大の学費では、大きな開きがある。具体的に、学部系統別で見てみよう。国立大は学部によって授業料が変わることがないから、先に国立大をチェックしてみる。
【国立大の学費】
*卒業まで6年間=医・歯(薬)系学部
入学金(初年度):28万2000円
授業料(年額53万5800円×6年分)
合計:349万6800円
*卒業まで4年間=医・歯(薬)系以外の学部
入学金(初年度):28万2000円
授業料(年額53万5800円×4年分)
合計:242万5200円
私立大の施設費4年分が負担になる
文科省「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査結果について」を活用。入学金(初年度)・授業料・施設費(4年間)を、それぞれ合計して表示した。
【私立大の学費】
*卒業まで6年間=医・歯・(薬)系学部
合計:2396万1844円
*卒業まで4年間=文科系学部(文・人文学系、
経済・経営・商系、教育系、法・政治系ほか)
合計=407万9015円
*理科系学部(理学系・工学系ほか)
合計=551万1961円
*その他学部(家政・芸術・体育・保健ほか)
合計=507万3940円