第71回 大学・大学入試情報コラム

2024年2月25日、「前期日程試験」が実施された。女子大の工学部新設、「女子枠」導入など、リケジョの増加はあるのか? また、国公立大受験者の動向は? 注目された学部の倍率は?

2024年3月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

前期日程志願者23万2344人、2.9倍
 国公立大2次試験の前期日程が2月25日、各地の大学で始まった。文科省が2月20日に公表した「2024年度国公立大学入学者選抜確定志願状況」によれば、172大学601学部が実施。前期の志願者は23万2344人(前年:23万1450人)で、募集人員(8万486人)に対する倍率は前年と同じ2.9倍だった。
 また、「大学入学共通テスト」の結果で「2段階選抜」(足切り)を前期日程で実施したのは、東京大(対象:892人)、東京工業大(同407人)、東京都立大(同360人)など35大学55学部で、4413人が不合格となった。

前期日程のトップは東京芸術大・美術
 前期・後期・中期日程を合わせた2024年度の全志願者数は42万3260人で、前年度42万3180人より80人増加した。因みに、倍率は志願者数が増えたものの、4.3倍で前年と同じだった。
 2024年度の日程別高倍率1位大学は、国立大前期日程:東京芸術大・美術12.5倍、同後期日程:広島大・薬39.3倍、公立大前期日程:釧路公立大・経済10.0倍、同後期日程:愛媛県立医療技術大・保健科学36.8倍、同中期日程:下関市立大・データサイエンス42.4倍だった。
 前期日程のトップ東京芸術大・美術は前期高倍率の常連大学、釧路公立大・経済はインターネット出願導入と前期のみ“個別学力検査なし”等が高倍率の要因とみられる。因みに、後期・中期日程は、前期の合格手続き者が抜けることにより、倍率は大幅にダウンする。

お茶の水女子大・共創工学部は2.5倍
 2024年度入試の注目点の1つは、女子大の工学系学部の新設と「女子枠」導入によって、「リケジョ」がどうなったかだろう?「女子枠」については、文科省「学校基本調査速報」(7月公表予定)のデータを待つしかない。
 2024年度の志願状況で、女子の理系進出3年目の奈良女子大工学部(前期4.0倍、後期8.3倍)をチェック。これに続いて今年、お水の水女子大が共創工学部を新設。同学部の志願倍率は前期2.5倍、後期7.4倍となり、理系学部として堅実なスタートを切った。

データサイエンス・文理融合系は順調
 もう1つ気になるのが、飽和状態気味ではないかと危惧されていた「情報・データサイエンス系」学部の状況だ。
 早くスタートした滋賀大データサイエンス学部(前期3.1倍、後期9.2倍)に続き、横浜市立大データサイエンス学部(前期3.0倍、後期13.2倍)、2年目の一橋大ソーシャル・データサイエンス学部(前期3.8倍、後期21.5倍)なども順調な推移を見せている。
 インターネット・AI時代の到来とその対応・発展への要請に応えての「人材の育成」に大きな期待が寄せられている。

学部系統別志願倍率1位は薬・看護
 ここで、「国公立大学入学者選抜学部系統別志願状況」を見てみよう。志願倍率を学部系統別にみると、①「薬・看護」4.9倍(前年:5.2倍)、②「医・歯」4.8倍(前年と同じ)、③「その他」4.5倍(前年:4.4倍)、④「人文・社会」4.4倍(前年と同じ)、⑤「理工」4.1倍(前年:4.2倍)、⑥「農・水産」4.1倍(前年:4.2倍)、⑦「教員養成」3.5倍(前年:3.6倍)。
 系統別の倍率を見た限りでは、文理融合系が多い「その他」がアップ、前年と同じが「医・歯」、「人文・社会」、これら以外の「理工」、「農・水産」、「教員養成」はダウンした。しかし、「理工」は僅か173人の減少であり、気にするほどではなかった。
 この傾向は「共通テスト」の平均点と連動しており、文系科目の国語が対前年+10.76点、地理Bが+5.28点、生物が+6.36点、英語リスニング+4.89点などが影響している。

年内入試は新設「英検準2級プラス」
 一方、私立大の動向も気になるが、各私立大学の入試関連情報の集計は4月以降となるため、順次判明次第、分析して情報を提供したい。
 最近、私立大を中心に「年内入試」(総合型選抜、学校推薦型選抜)で入学する受験生が増え、話題になっている。その合否判定で大学側が悩んでいるのが、学力のチェック。現状は、「調査書」の評定平均値と面接等に頼っているが、これとて中・下位高校のデータにはクエッションがつく場合が多いという。
 その要請に応えたのが、日本英語検定協会の(英検)「準2級プラス」だという。英検は2月9日、2025年度から導入する「準2級プラス」の合格基準スコアとCEFR算出範囲を公表した。参考:2025年度 準2級プラス(新設級)の紹介 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会 (eiken.or.jp)
 これまで、英検は高1生で「準2級」、高校卒業時に「2級」の取得を目標としたレベル設定をしてきた。これからは、これに加えて高2生で準2級プラスが加わる。つまり、準2級と2級のギャップを埋めることになるのだ。
 受験生が英検のどの級を取得しているかで、学力レベルが判明し、それが第三者機関の物差しであることに、大学側は大きな利用価値がある。これからは、「年内入試」を目指すならば、「英検」の取得がますます重要になるだろう。

本間 猛:東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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