第54回 大学・大学入試情報コラム

2023年度入試も、ほぼ終了した。
入試結果は出ていないが、傾向や流れは見えてきた。
2024年度「現行課程入試」が終われば、注目の「新課程入試」。どうなるか?

2023年4月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

入試の最後は「欠員補充の2次募集」
 2023年入試のラストは、毎年のことだが国公立大学の欠員補充2次募集だ。国立は山形大、静岡大、長崎大など8大学109人、公立は3大学19人だった。
 出願期間は3月28日・29日までで、出願は持参に限るケースが多い。合否判定は共通テストの結果が殆どで、個別試験は課さない。山形大工学部(昼間コース)の54人は、決して少ない人員ではない。
 また、2023年入試では、国公立大学の出題ミスが目立った。報道されただけでも、北海道大、信州大、神戸大、大阪公立大など11大学に及んだ。一方、私立大はカウントできないほど多いのが実態。そして、処理として、「全員正解にする」のが気にかかる。

東京大「推薦」京都大「特色入試」結果
 2024年度は、現行課程による最後の入試であり、今年の延長線上にあることが予想される。そこで、2023年度入試の特徴や流れを見てみよう。先ずは、2023年度の東京大「推薦」、 京都大「特色入試」の結果から──。
 東京大は100人程度の募集人員に対して合格者は88人。男子53人、女子35人だった。学部別では、工学部34人が最多、法学部・文学部・理学部・農学部が各8人合格で並んだ。
 京都大「特色入試」の合格者数(後期の法を除く)は、昨年を18人上回る113人。男子50人、女子63人で、女子が13人男子を上回った。学部学科別では、医学部人間健康学科が16人で最多、続いて経済学部(文系型入試)と農学部工業化学科が13人で並び、京都大は、増加の流れとなった。果たして、2024年度は?
 2023年度は、年内に合格を手に入れたいとする受験生が多かった。2024年度も「総合型選抜」「学校推薦型選抜」の増加傾向は続くだろう。

女子の文理融合分野への進出に期待
 また、国(文科省)はIT教育の拡大に懸命だ。2023年度は、国公私立大学で「データサイエンス学部」が多数新設された。まだ、入試結果は判明していないが、予想以上の人気だった。
 また、2024年度には、お茶の水女子大が共創工学部を設置予定だ。国立では、奈良女子大に続き2校目。また、東京工業大では、総合型・学校推薦型選抜で143人の女子枠を設ける。
 ともかく、国(文科省)は文理融合のデータサイエンス系やリベラルアーツ系への女子の進出に期待を寄せている。そんな最中、「恵泉女学園大」は2024年度以降、大学と大学院の学生募集を停止すると3月23日に公表し、関係者に大きなショックを与えた。他の定員割れ大学の出方が、大いに注目される。

デジタル分野のため定員規制を緩和
 国(文科省)は、「科学立国“日本”」を目指し始めている。2023年度から理工系学部のある私立大学への私学助成金を増額する方針を決めた。一方、文系向けは据え置きのまま。デジタルや脱炭素といった成長分野の人材育成を重視する国の方針に沿い、理工系学部の新設・拡充につなげたいとしている。
 また、国はデジタル分野の人材を育成するため、東京23区内の大学の定員増を認めない規制を2024年度にも緩和する方針という。早速、地方からは反対の声も上がっている。

国公私立大学に入試改善を促す指針
 また、初めてのことだが、文科省は受験科目の見直しや英語民間試験活用など、国公私立大学に入試改善を促す指針を作成した。
 一部大学では、学生確保のため、入学後の学習に必要な理系科目を課さないなどと指摘されている。高校段階から幅広く学び、大学で文理の枠を超えた能力を伸ばせる大学生の拡大を目指す方向だ。
 文科省の指針案は、入試で入学後の授業に必要な科目を課すように大学側に求めるというもの。ズバリ言えば、文系に数学を課すかどうかという問題である。このあたりのファジーさが、日本のIT人材育成の遅れに繋がっている、と指摘する関係者は多い。

「情報Ⅰ」の扱いで、不安にしないで!!
 2025年度入試からは、「新学習指導要領」で学んできている高2生が受験する。その新課程の「共通テスト」は、7教科21科目(現行は6教科30科目)に再編される。その増えた1教科が「情報Ⅰ」なのだ。
 国立大学協会は「原則として一般選抜では全員必須」との方針を決めたが、これまでに北海道大、徳島大、香川大の3大学が「全員に課すが配点はしない」との方針を示した。理由の1つは、「浪人生が受ける旧課程の問題と情報Ⅰの難易度に差が出る懸念がある」というもの。受験者は現役が多いのだが──。
 「情報が入試に出れば教育環境が充実する」と期待する産業界だが、一方教育現場からは、指導体制に地域差があるという声もある。「情報Ⅰ」の配点は100点。この100点は受験生にとって重い。悩ましい問題ではあるが、受験生に不安を与えるようなことはしてほしくないものだ。

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