第55回 大学・大学入試情報コラム

2024年度は「現行課程」の最後の入試。
受験生は「後がない」として、「年内入試」に集中しそうだ。
2024年度入試の変更点も公表され出した。また、「チャットGPT」の扱いは?

2023年5月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

2024年度は「後がない入試」となる!!
 2024年入試は、早くも「後がない入試」と呼ばれている。高1・2生はすでに「新課程」で学び、高3生のみが「現行課程」で学んでいる。2025年度からの新課程「共通テスト」では、新教科「情報」に加え、国語、地歴・公民、数学に変更があり、教科・科目数は現行の6教科30科目から7教科21科目になり、負担が増加する。
 2024年度入試に失敗すると、次年度は「経過措置」が取られるため、これを避けたい受験生は、「後がない」と合格を目指す。志望校のレベルを下げたり、早期選抜(総合・推薦)にシフトしたりする傾向が予想される。ますます「年内入試」が増加するだろう。

データサイエンス系は24年度も増加
 2024年度入試の変更点はどうか。文科省は2023年4月7日、3月末申請の大学学部等の設置認可の諮問状況を公表(12校、14学部17学科設置予定)したが、データサイエンス系学部設置の傾向は宇都宮大、下関市立大、明治学院大、金沢学院大情報工学部など、2024年度も増加が続いている。
 また、女子大の工学部設置の流れは、奈良女子大、共立女子大に続き、お茶の水女子大共創工学部、日本女子大建築デザイン学部の新設予定等が注目されている。
 女子の理系志向については、「数学の壁」があるようで、好調とまでは言えないが、社会科学系の法学部・経済学部・商学部などへの進出は目立っている。

募集停止の女子大・短大が増えている
 「恵泉女学園大」が3月23日、2024年度以降、大学と大学院の学生募集を停止すると公表して以降、4月になって女子大・短大の募集停止が相次いでいる。神戸海星女子学院大、上智大短期大学部、岐阜成徳学園短大部などで、いずれも入学者数の定員割れが続いたことを理由に、募集停止や閉校を公表した。
 定員割れ状態は女子大に多く見られ、2023年度志願者数は前年より東京女子大で1486人減、同志社女子大で1137人減だった。名門といわれる津田塾大、日本女子大、京都女子大、神戸女学院大なども志願者を減らした。

女子大の男女共学化、高大連携など
 女子大としても、新たな対応をとってきた。例えば、男女共学。2024年度から桜花学園大が男女共学に移行する。ちなみに、2023年度に共学に踏み切った神戸親和大では、入学者女子300人、男子160人だった。初年度の男子が、女子の半数以上というのは「健闘」と言えるだろう。
 また、日本女子大は4月3日、桐朋女子高と高大連携協定を結び、2024年度より推薦制度の導入も始まる。これらの対策が、志願者の増加につながることを期待したい。
 さらに、英語の資格取得者に対する優遇措置だ。TOEICや英検などのスコアを提出し条件をクリアすれば、学費が免除される大学もある。浦和大、共愛学園前橋国際大、静岡英和学院大などだ。

東京工業大・東京理科大が「女子枠」
 2024年度入試で注目を集めているのが、理工系の「女子枠」の導入だ。東京工業大は総合型選抜、学校推薦型選抜で「女子枠」を設け、4学院(物質理工学院、情報理工学院、生命理工学院、環境・社会理工学院)で新選抜を開始し58人を募集。また、北見工業大と名古屋工業大も女子枠を導入する。
 さらに、私立では東京理科大が4月19日、工学系の総合型選抜で計48人の女子枠を創設すると発表した。出願には、高校3年時の数学と理科の評定平均が4以上などの条件があり、10月には小論文や面接の試験がある。

世界・社会を変える「チャットGPT」は?
 今、世界中で話題になっているのが、質問に対して即座に回答してくれる、対話型AI「チャットGPT」(2022年11月に「オープンAI社」が開発)だ。ネット上の膨大な情報を学習し、人間の指示に応じて文章や画像などを生成できる人工知能(AI)で、登録すれば誰でも無料で使える。
 「チャットGPT」は、人と会話しているようなスムーズなやり取りができるだけでなく、会話を重ねることで必要な情報を的確に得ることができる。作業を効率化するメリットがある一方で、内容の正確性、プライバシーや企業情報の漏洩、雇用の喪失などを懸念する声が上がっている。

リポート、論文などの利用は不正行為
 大学などの教育現場では、論文やレポートを「チャットGPT」で作成することを懸念し、対応を公表している。

東北大 3月末、学生と教職員向けの留意事項として「AIの出力をリポートなどにそのまま利用すると勉強にならない。検索手段として使う場合でも、内容の確認が必要」とした。
東京大リポートなどは学生本人が作成することを前提とし、教員側にはヒアリングや筆記試験を組み合わせて本人作成かを確認する必要があるとした。
上智大リポート、小論文、学位論文について、AIによる文章、プログラムコード、計算結果の利用を禁止する方針を示し、利用が確認された場合は「厳格な対応を行う」とした。
各大学の対応例


 多くの大学は、ホームページで見解を公表している。また、東京大、京都大、慶應義塾大、早稲田大などの主要大学は、リポートなど学生の提出物に関して、盗用検知ソフトをすでに活用している。

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