第47回 大学・大学入試情報コラム

2023年1月14日・15日に実施される共通テスト。
確定志願者数は51万2581人となった。果たして、結果は?
年末企画として、入試などの「気になる」テーマについて、考えてみた。

2023年1月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

「共通テスト」を敬遠? 私大の受験者
 2022年も「師走」を迎えた(注:原稿をいただいた時点では12月)。年末の企画ということで、今回は筆者が日頃から「どうなのかな?」と、気になっている事柄・テーマについて少し私見を述べてみたい。
 大学入試センターは2022年12月6日、2023年1月14日・15日に実施される「共通テスト」の確定志願者数を公表した。前年から1万7786人減って、51万2581人だった。残念ながら、志願者の50万人越えは、今回で最後ではないか、と見られている。
 その要因は、少子化に伴う受験生の減少と、「共通テスト」の不人気にある。以前の「センター試験」は知識再生型で、私立大学の一般選抜にも役立ったが、学力の3要素を重視する「共通テスト」とはギャップがあり過ぎるとして、敬遠する傾向があるのだ。そうなれば、受験生減によって受験料収入が減り、大学入試センターは苦境に立つことになるかもしれない。

女子の「理系分野」への進出が目立つ
 2022年12月20日刊の『未来の年表・業界大変化』(河合雅司著)を読み、衝撃を受けた。「2020年、女性の半数が50歳を超える。2024年、全国民の3人に1人以上が65歳以上になる。2033年、3戸に1戸が空き家になる。2040年、自治体の半数が消滅する」とは──。その時、教育はどうなっているのか? 学校の統合がより進み、やがて18歳人口が激減する。
 そんな社会への対応だろうか、2023年度入試の特徴の1つが、女子の理系志望者増である。国公私立大学ともに外国語や国際系が減り、農・理工系が増えているのだ。
 文科省も、女子の割合が低い理系分野を中心に、女子学生の確保に積極的に取り組む大学に交付金や助成などで支援している。日本は将来的にも、女子の活躍が不可欠なのだ。

総合型・学校推薦型の入学者が増加
 また、大学入学者のルートは「一般選抜」が50%以上、「総合型選抜」「学校推薦型選抜」「付属校・系属校」などが50%以下というのが一般的だった。しかし、現在「一般選抜」が多いのは国公立大学と難関私立大学などが中心で、中堅私立大学以下では「総合型選抜」「学校推薦型選抜」などが50%を超えている。
 いわゆるFランク大学では、学生の確保を最優先させているため、「合格⇒入学」が容易になっているようだ。また、コロナ下では、留学生を当てにできないという事情もある。
 このレベルの大学が増加すると、どうなるのか。「偏差値による輪切り」が意味をなさなくなり、やがて大学のレベルは横並びになってしまうだろう。

新課程では「探究」「課題解決」が重要
 将来の進路はどのように決めたらよいか、が問題になる。先の『未来の年表・業界大変化』などでは、人口減少によってマーケットの縮小や人手不足が起こり、過去の成功モデルが通用しなくなると指摘。社会が大変革する中で、各企業は成長分野を新たに定め、集中的に人・物・金を投入する必要がある、としている。
 新課程では「探究」が重視され、「覚えることが学ぶこと」ではなくなった。「自ら考えて、課題を解決する力」が求められているのだ。
 人間は、ただ覚えるだけならコンピュータには勝てないし、マニュアルに沿ってモノを作るだけならロボットに敵わない。結局は、積極的に「探究」をサポートする環境がある大学・企業などが、進路選択の対象になるだろう。

「全入時代の到来」は確認が難しい!!
 厚生労働省は2022年12月20日、人口動態統計速報で2022年の出生数は初めて80万人を割り込む見通しだ、と公表した。2023年度の18歳人口は約120万人だから、18年後には40万人、1/3も減ることになる。社会の風景がガラリと変わることが分かる。
 また、文科省の「2022年度私立大学入学志願者動向」(共済事業団:9月9日)によれば、私立大学全体に占める定員未充足校の割合は47.5%。いわゆる定員割れ大学が、約半数に上っているのだから驚きだ。
 さらに、2022年度の大学進学率56.6%を勘案すれば、「全入時代の到来」を予測できるが、個々のケースを確かめるのは難しい。

優秀な学生は各分野に分散して欲しい
 何とかならないのか、といつも思っているのが、優秀な高校生が、医学部医学科に多く進学することだ。日本の発展のためには、決してプラスではない。
 経済的な優位性で、医師を目指すのかもしれないが、優秀な学生は、他の分野に分散して欲しいものだ。「神の手」を持つ医師数、ワクチン開発などの研究分野では、他国に後れを取ることなく、優秀さを発揮してもらいたい。
 また、就活に「ガクチカ」というキーワードがある。「学生時代に力を入れたこと」の意味だが、医学部以外の学部に進んでも、全力で学び、優秀な結果を残して欲しいものだ。

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