第58回 大学・大学入試情報コラム
2023年度入試の総括、2024年度の変更点も見えてきた。
「年内入試」「データサイエンス学部」のポイント、さらに文理融合系の「スポーツ系学部」にもアプローチした。
2023年6月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
23年度は文系で経済・経営・商が増加
全国の大学も2024年度用の「大学案内」を制作し、受験生・保護者を対象にした「大学説明会」が各地でスタートしている。このことは、各大学が23年度入試を総括し、24年度の方針を明確にしたことを意味している。以下に、生徒・父母との対応用に役立つよう、特徴をまとめてみた。
1.共通テスト:3年目になっても安定せず、得点調整も2年連続。平均点は数学の難易で、22年はダウン、23年はアップした。センター試験当時の、平均点に届いていない。 |
2.国公立大:志願者が減る中、文系は経済・経営・商学系が増加。理系は23年度も医歯薬・医療系が高人気。理学系は前年並み、看護系・工学系は微減。旧帝大系は志願者減。一橋大の新設「ソーシャル・データサイエンス学部」は前期6.1倍、後期25.8倍の高倍率で、超人気だった。 |
3.私立大:入学者の約5割が「学校推薦型選抜」「総合型選抜」での合格者。「年内入試」が人気で、「一般選抜」は減少気味。また、「理高文低」傾向だった。さらに、工学系の機械や電気などに、女子の進出が見られた。私立大においても、情報・データサイエンス系は注目を集めた。一般選抜では、大学定員厳格化の緩和で、追加合格者が前年度に比して激減。また、難関大志望者を中心に、地元志向から都市部への回帰が見られた。 |
24年度も「文理融合系学部」が増加!!
1.共通テスト:難易が落ち着くかどうか。因みに、過去の新テスト導入時には、4年目以降からほぼ安定傾向だった。 |
2.年内入試:増加傾向で、私大専願者の共通テスト離れが進み、二極化傾向に拍車の予想。私立大は共通テスト受験者の入学を促すため、「共通テスト利用入試」は継続実施。 |
3.文理融合系学部:情報・データサイエンス系学部は増加。また、文系型と理系型の2募集方式を導入。(長崎大、岡山大など) |
4.女子枠:導入が増加。(東京工業大、名古屋工業大、東京理科大など多数) |
5.大学再編:女子大の工学系への門戸拡大。(お茶の水女子大・共創工)、文系大学の理系へのシフト替え(麗澤大工学部新設)など。 |
「年内入試」は「探究学習」がポイント!!
これらの特徴に関連する、いくつかのテーマについて、ポイントを挙げてみた。
「年内入試」の対象は、「総合型選抜」「学校推薦型選抜」である。「学校推薦型選抜」は「評定平均」が基本になるから、高1~高3の1学期までの学業努力がポイント。これは生徒の自己責任であり、支援には限界がある。
そこで注目されるのが、「総合的な探究の時間(探究学習)」であり、「志望理由」や「面接」に役立つ。この時間しだいでは、「探究学習の中で見つけた課題を解決するために、この大学で学び、将来はこのテーマで社会に貢献したい」と、アピールできるようにする。
そのためには、高1からの授業の継続が必要であり、持ち上がりが望ましい。また、「年内入試」と思って甘く対処しないよう、生徒に警鐘を鳴らせるべきだろう。
「データサイエンス」と英語力で世界へ
最近の入試は女子の社会進出に伴い、女子絡みの話題が多い。文理融合系学部は、なぜか“男女融合”のようにも聞こえてくる。
「データサイエンス学部」は、インターネットなどを通じて大量に集められた「ビッグデータ」を分析し、ビジネスや社会の課題解決に役立てるための学問。数学が嫌いでなければ、数学Ⅲや統計の内容等は大学でも学べるから、十分に対応できる。入試では、文・理両方からアプローチできるように工夫している大学もある。
卒業生の就職先は、IT系、金融系、製造業、シンクタンク、コンサルティング会社など、幅広い業種にわたっており、これに英語力が伴えば世界中で通用するだろう。どのようにデータを活かすか、その「想像力」がポイントになる。
「スポーツ系学部」は健康を加え拡大
文理融合系で忘れがちなのが、「スポーツ系学部」だ。2003年に早稲田大が「スポーツ科学部」を開設して以来、多くの大学が設置。最近は、当初のスポーツ科学に、健康に関する学習が加えられ、23年には東洋大が「健康スポーツ科学部」(健康スポーツ科学科・栄養科学科)、立教大は「スポーツウエルネス学部」を開設した。
卒業後の進路は、一般企業(スポーツ関連企業・施設、健康食品メーカー等)から教員、スポーツ選手などさまざま。地方公務員として、体育・健康面で活躍する人材もいる。好きなことに挑戦しながら、将来に結びつくのは素晴らしい。