第50回 大学・大学入試情報コラム
2023年1月14日・15日に実施された「共通テスト」。
「数学」の前年反動による易化などで、「平均点」がアップした。
「理科②」は、物理と生物の点差が20点以上になり得点調整。その影響は?
2023年2月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
23年度「共通テスト」大トラブルはなし
3回目となる2023年度「大学入学共通テスト」は1月14日・15日、コロナ禍が続く中で実施された。大きな不祥事はなかったものの、山口大学工学部会場の火災報知器鳴動、また、大阪・名古屋・東京・山形等の会場では試験監督者の時間管理不備などで、再試験対象者(過去最多の3893人)が出た。
大学入試センターによれば、今回の「共通テスト」の志願者51万2581人のうち、第1日目の教科を受験した割合(受験率)は、地理歴史・公民78.3%(前年:78.4%)、国語86.9%(同86.9%)、外国語(リーディング・筆記)90.7%(同90.8%)英語(リスニング)90.1%(同90.3%)で、過去とほぼ同様だった。
「平均点」がアップ、理科②で得点調整
2023年度「共通テスト」の特徴は? 3回目で、出題形式・傾向が見えて来たようだ。基本的には、複数の資料を分析して思考力や判断力を測る出題であり、各教科で目立った。会話文形式、グラフや表等に基づく複数資料の考察など、受験生からは「時間不足」の声が聞かれた。
入試センターが1月20日に公表した中間集計(受験者数47万1150人)によれば、数学が前年の反動で易しくなり、平均点が大幅にアップ。最終結果ではないが、国語~英語までの27科目中、15科目の平均点が前年を上回った。
また、理科②では、物理(63.39点)と生物(39.74点)の間で平均点差が20点以上あったため、共通テスト2回目の得点調整が行われた。ただし、地学は受験者数が1万人に満たないため対象とならなかった。因みに、共通テストの最終結果は2月6日に公表される。
数学:前年の反動で易化し、全て上昇
主な教科の内容的な特徴を見てみよう。前年は平均点を大幅にダウンさせた「数学」だったが、今年はその反動(?)で易化した。中間集計の平均点を前年と比べると、数学Ⅰ:+15.95点、数学Ⅰ・A:+17.69点、数学Ⅱ:+3.24点、数学Ⅱ・B:+18.42点と、全てがアップ。
数学Ⅰ・Aと数学Ⅱ・Bでは昨年と同様、大問数5で、第1問・第2問は必答、第3問~第5問の中から2大問選択する形式。問題のページ数は21~22ページで、昨年より1~2ページ増加した。問題の流れが適正だったようだ。
バスケットボールの軌道、ソメイヨシノの開花日時、預金の複利計算など、日常の事象を題材とした問題が出された。三角・指数・対数関数、微分・積分・数列など、昨年出題された図形と方程式を除き、広範な分野が出題された。
国語:複数のテキストを読み解く問題
中間集計での国語の平均点は105.74点で、前年110.26点より4.52点ダウンした。
昨年と同じ大問4問が出題され、4問とも複数のテキストを読み解く問題だった。第1問は、建築をテーマにした2つの文章が示され、さらに設問の中に生徒の話し合いの場面が盛り込まれて、構成が複雑化していた。
第2問は、戦後の食糧難の時代を舞台にした小説で、広告を掲載した説明的な資料を使った新傾向の問題だった。第3問の古文は、設問形式が前年の本・追試験と似た傾向。第4問は漢文で、過去2回続いた漢詩の出題はなかった。
また、語句の意味を問う知識問題は減少し、内容の理解を問う出題が増えた。発展的な思考力がより求められたのが平均点ダウンに繋がったようだ。
英語:リーディングがやや難化の傾向
英語リーディングは、平均点が53.82点(前年:61.80点)で、7.98点ダウン。また、リスニングは62.35点(前年:59.45点)で、2.9点上がった。
【リーディング】大問数6は、前年と同じだった。ブログや広告などの日常的素材から論説文まで、題材が広範に及んだ。また、語数は前年同様に約6000語と多かった。第6問はクマムシの特徴や生態を紹介した英文を読んで、その内容について問うものだった。クマムシの断面図も掲載され、クマムシを知っている人はかなり有利だった。
【リスニング】1回で聴き取って解答するには、やや難しい問題も含まれていた。今回は「e-Sports」の話を取り上げるなど、興味深いテーマを出題した。また、音声を正確に聴き取り、その情報を他の表現に言い換える力や、情報の処理能力などが求められた。
《出願動向》共通テスト終了後に、自己採点業者が5教科7科目文系型・理系型の平均点等を公表。各データとも、前年より平均点がアップした。それらを基に、受験者は大学を決めて出願。今年は、数学を得意とする理系志望者が高得点となり、強気な出願が予想される。浪人が健闘した、との声もある。また、増加した女子の理系受験者がどう動くか、さらに生物の得点が伸びなかったのがどう影響するか、気にかかるところである。