第39回 大学・大学入試情報コラム

受験生や大学を悩ませてきた「定員の厳格化」が
見直される。当初発表の合格者数が増えるため、追加合格や
入学金のダブル支払いも減るはず――。さらに、2023年度入試の特徴は?

2022年7月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

「不正行為」への防止が強化される
 文科省は6月3日、「2023年度大学入学者選抜実施要項」を公表したが、そこで例年より目立ったのは「不正防止」だった。2022年度共通テストで、受験生が試験中に問題を外部に流出させた事件があったからだ。
 試験中の巡視は勿論、スマホの電源オフの強化が徹底される。また、カンニング等の不正行為については、「警察へ被害届を出す可能性があること」を、受験生に伝えることも大学側に求めた。これを受けて、高校としても不正行為者への「罰則強化の方向性」について、以前に増して注意喚起が必要になるだろう。

「調査書」の重要性を早く認識すべき
 また、「実施要項」では、「調査書」の重要性を強調している。「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」での入学者が約50%を占める現実の中で、合否判定の基本になる「調査書」について言及するのは当然と言えるだろう。
 大学生に入試の反省について聞くと、意外に多いのが「高1の時から”調査書“の重要性を知っておくべきだった」という声。特別選抜では、出願のポイントになるのが「評定平均値」等であり、その算出方法を知っていれば「1・2年生の学習にもっと真剣に取り組んだはず」という、後悔の念を含む声だった。
 学力面においては、高3生になってから調査書の重要性に気づいても、挽回のチャンスは1学期(前期)しか残されておらず、時間的に手遅れ。後は、面接等でヤル気を見せ、部活やボランティア等で実績を残すしかないのだ。

入学後の「学習意欲」を評価する動き
 「意欲」を評価しようという動きは、今回の教育・入試改革の一環でもある。従来の知識偏重を改善するために導入されたのが、「主体性の評価」という方式。主に、面接や小論文、調査書の点数化などを通じて、ペーパー試験では見えにくい、入学後の学習意欲を測ることを狙いとしている。
 一般選抜における「主体性の評価」の活用方法は各大学によって異なるが、女子大では積極的に利用している大学(大妻女子大など)もある。また、北海道教育大も、「学びの履歴と志望理由書」の提出を追加している。

工学部の女子枠設置で入学者増加へ
 2023年度入試では、女子大絡みの変更がやや目立つ。新たに男女共学になる女子大は2校で、神戸親和女子大→神戸親和大、鹿児島純心女子大→鹿児島純心大だ。
 女子の工学部への門戸の拡大も注目されている。奈良女子大に続いて、2023年度には共立女子大が建築・デザイン学部を新設する。
 また、名古屋大工学部では、電気電子情報工、エネルギー理工の2学科が、共通テストを課す学校推薦型選抜に女子枠を設ける。さらに、女子の増加に取り組んでいる芝浦工業大は、公募制推薦による女子枠実施学部を1学部から4学部に増やす。

定員の厳格化が見直され追加合格減
 文科省は、都市部大学への学生集中を避けるため、2018年から大学の規模に応じて入学者数が定員の1.1~1.3倍以上になると補助金を全額不交付にするとした。
 この厳格化していた私立大の入学定員の基準を、2023年度に緩和する方向で見直す。これも「入試変更点」の大きな1つ。私学助成の全額不交付の要件を、毎年の入学定員でなく、全学年の総定員で判断するよう運用を変更するものだ。これにより、ある年に入学定員をオーバーしても、翌年以降に入学者を減らせば、基準をクリアすることができる。
 2022年度までの私立大は、定員割れを防ぐため、追加合格を小刻みに実施して入学者数を調整。そのため当初の入学手続きを取り消す、入学金のダブル支払い等が頻発していた。
 今回の変更は、この追加合格を減らすのが狙いだ。今後は、絞り込みが緩やかになり、当初の合格者数が増えれば、受験生による担任への相談も減るだろう。

「来場型」オープンキャンパスが復活
 オープンキャンパスはコロナ禍の影響で、ここ2年は「Web(オンライン)型」が中心だった。しかし、今夏のオープンキャンパスは、従来の「来場(対面)型」が大幅に復活する。
 受験生が動きやすい、夏季休暇の8~9月に開催され、最近は親子で参加するケースも目立つ。年内に実施される「総合型選抜」や「学校推薦型選抜」を狙う受験生は、早めにオープンキャンパスの「入試説明会」に参加したい。また、事前予約制の大学が多いから注意する。

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