第38回 大学・大学入試情報コラム

全国の大学が「大学案内」を通して、2023年度
入試情報等を公表。少しずつ特徴や変更点が見えてきた。
学部・学科の新設では、「情報学部・データサイエンス学部」が目立った。

2022年6月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

13大学で情報・データサイエンス新設
 6月になると、各大学は「大学案内」を通して、2023年度入試情報等を公表する。それらの情報を現段階で眺めると、2023年度入試の特徴や変更点等が少しずつ見えてくる。
 新設を予定している学部・学科に絞ってチェックすると、社会のIT関連のニーズに呼応するかのように、「情報学部・データサイエンス学部」が目立つ。国公立大2校、私立大11校、計13校で学部・学科の開設を文科省に申請中。

【国公立大】(学部)一橋大(ソーシャル・データサイエンス学部:60人)、名古屋市立大(データサイエンス学部:80人)
【私立大】(学部・学科)東北学院大(情報学部:190人)、神奈川大(情報学部:届出中)、湘南工科大(情報学部:275人)、亜細亜大(経営学部データサイエンス学科:80人)、北里大(未来工学部データサイエンス学科:100人)、順天堂大(健康データサイエンス学部:100人)、東京都市大(デザイン・データ科学部:100人)、明星大(データサイエンス学環:30人)、京都女子大(データサイエンス学部:95人)、大阪成蹊大(データサイエンス学部:80人)、大和大(情報学部:200人)など(文科省へ申請中)
23年「情報・データサイエンス学部・学科」予定

文理融合型の増加は選択肢を広げる
 情報学部やデータサイエンス学部・学科の増加は、ひと頃の看護学部の新設ブームを想起させる。時代の潮流に乗っていることと、根底には学問の垣根を超えた文理融合型の拡大がある。リベラルアーツが注目される時代だ。
 東京大や国際基督教大の教養学部に始まり、1990年の慶應義塾大総合政策・環境情報学部、大阪大や早稲田大の人間科学部、近年ではリベラルアーツ学部、国際教養学部、共創学部など、文理融合型の学部は多い。
 高2からの文理分けは、生徒にとって負担になるようだ。人生の目標を、高1の段階で明確に決めている生徒はむしろ希で、一般的には文系科目の方が好きだから、理系科目の成績が良いから、と自らを納得させて文理分けをし、進路を決めているのではなかろうか。
 このような状況における、文理融合学部の増加は、学生の選択肢を広げることになる。

テーマは文系、手法は理系のイメージ
 滋賀大がデータサイエンス学部設置して以来、カタカナ名称のせいか、簡単なイメージが先行しているようだ。実際は、テーマは文系、手法は理系の文理融合のイメージといえる。
 データサイエンスを学ぶには、数学や統計学の知識が欠かせない。確率・統計等の基礎数学、経営数学、データから規則性を見出す数理統計学などを学ぶ。また、ビックデータの処理・分析・解析などを体系的に身に付ける。最後に、これらの手法を社会の各分野で生かし、目標の達成や問題の解決等を図ることになる。
 ビジネス、環境、医療、経済、国際関係、教育など、各人が興味のあるテーマの知見を深め、それらの知識とデータサイエンスを組み合わせることで、価値をより高めことができる。

「データサイエンティスト」の人材を育成
 データサイエンス学部と呼ばれる以前は、理学・工学系の情報学部が学問分野としてきた。東京大のデータサイエンス関連の講義は約180を超え、日本のこの分野をリード。また、東京理科大工学部情報学科は、2019年から研究推進機構の下に「データサイエンスセンター」を設置しており、この分野で伝統がある。
 ともかく、各大学はデータサイエンティスト、すなわちビッグデータを処理・分析し、そこから新たな価値を生みだすことのできる人材を育成することを目標にしている。
 職種としてはデータエンジニア(データを分析に使えるようにする)、データアナリスト(データベースから引っ張ってきたデータをビジュアル化し、詳しく分析して傾向を見つけ出す役割を担う)、データサイエンティスト(業務範囲が非常に広く、写真や音声、文章なども扱う)などがある。

政府が「データサイエンス教育」を推進
 政府は2019年に発表した「AI(人工知能)戦略」で、2025年を目標に、全ての大学・高専生がデータサイエンスやAIに関する初級レベルの能力を習得することを掲げた。大学などの教育機関がデータサイエンス教育に取り組むことを推進している。
 早稲田大は2021年4月より、独自の「データ科学認定制度」を創設し、学生にデータサイエンス教育を提供。将来、データサイエンティストを目指す学生には、大きな資格となる。

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