大学・大学入試情報
日本女子大から、120余年続いてきた「家政学部」の名前が消える驚き……。また、2026年度入試の動向はどうなる? さらに、AI・デジタル時代に、大学で身につけるべき必要なスキルとは何か?

日本女子大から「家政学部」が消える
名門の日本女子大は2025年11月7日、創立以来120年余の歴史を誇る「家政学部」の学科を、2028年までに全て学部化する構想を公表した。時代の流れとは言え、家政学部の終焉は大きな驚きを与えている。
まず住居学科が24年に建築デザイン学部に、次に食物学科が25年に食科学部にそれぞれ独立した。まだ学生を募集している3学科のうち、家政経済学科は27年に経済学部に、さらに28年には児童学科が人間科学部、被服学科がファッションデザイン学部に生まれ変わる予定だという。
“ポンジョ”で知られるブランド力のある日本女子大も、改革に舵を切った。他の定員割れが続く女子大は、改組・新設・募集停止・男女共学などの選択が迫られている。
国公立大は横ばい、私立大は微増!!
毎年11月には、各種模試データ等が公表されて、2026年度入試の動向を予想することができる。ポイントを紹介してみよう。
【共通テスト】25年度入試は新課程入試の初年度だったため、共通テストの試験内容に手心が見られ、平均点がアップしたが2年目になる26年度は難化して、平均点がダウンすることが予想されている。また、前年度の「情報Ⅰ」は、予想以上に易しかったようだ。
【国公立大】26年度の18歳人口は、25年度とほぼ変わらないが、志願者数は増加傾向。また、国公立大、私立大ともに理系への女子の増加や、強気な志願意識が見られる。
改組・新設では信州大、山口大などの工学系学部を中心に、複数学科を1~2学科にまとめるコース制を導入。また、佐賀大コスメティックサイエンス学環の新設などが注目されている。公立大の新設学部は、旭川市立大地域創造学部、長野大地域経営学部のような、地域密着の学部が多い。
全体の志願者数は100%で横ばい。東京大・京都大・東北大は減少、一橋大などが増加。
【私立大】全体の志願者数は103%で微増。上位校の早慶上理、MARCH、日東駒専、関関同立は増加傾向。学部新設にともない、東京理科大や立命館大などが定員増。また、共通テスト方式での志願者数が大幅に増加している。
【系統別志望動向】国公立大、私立大ともに文系は、「法・政治」「経済・経営・商」系統の学部が増加。理系は、「薬学」「生活科学(栄養学や社会福祉学など)」が減少、「医」「理」「工」「農」は微増、「情報」など他の学部は横ばいが予想されている。
TOCKY・5S・電農名繊って、ご存知?
入試情報では「MARCH」など、大学の偏差値別のグループ表記をよく見かける。最近、受験生間や塾情報等で、「TOCKY」「5S」「電農名繊」といったグループ大学群名を聞く。以下に、アバウトな偏差値に沿って紹介した。
67.5:東大 65:京大一工(京都・大阪・一橋・東工大) 早慶 (早稲田・慶應) 60:地方旧帝大(北海道・東北・名古屋・九州) TOCKY(筑波・お茶の水女子・千葉・神戸・横国) 上理 (上智・東京理科) 55-57.5:金岡千広(金沢・岡山・千葉・広島) 5S(埼玉、滋賀、信州、静岡、新潟) 電農名繊(電通・農工・名工・京都工繊) MARCH(明治・青山・立教・中央・法政)など。ただし、旧大学名での表記もある。
文系主体の私立大に40億、理系拡充
日本の「デジタル力」(スイス国際経営開発研究所が11月11日公表:2025年度版「世界デジタル競争力ランキング」)は30位で、最低レベル。因みに、3位シンガポール、4位香港、10位台湾、15位韓国だった。
文科省も日本の現実を憂慮し、デジタル人材の育成に取り組んでいる。11月12日には理系の大学に加えて、文系主体の私立大にも理系拡充への改革を後押しする方針を固めた。都市部の大規模私立大を中心に、1校当たり最大40億円程度を支援し、学部再編やカリキュラムの「文理融合」を促していく。
米国の若手はAIに代替されて苦戦
今、米国で問題になっているのが、若手の雇用の手控えだ。これまで多くの若手社員は、情報収集や資料作成、定型的な分析といった業務を通じてスキルを習得し、キャリアの第一歩を踏み出してきた。しかし、こうした業務こそが、AIによって最も自動化されやすい領域であったため、雇用減の要因になった。
日本の新卒採用は相変わらず好調だが、米国のような現象が起こりかねない。受験生には、対策としてAIが不得意な「問いを立てる力」「アイデアを紡ぐ力」「人を動かす力」を大学で身につけることだ、と伝えたい。
AIは与えられた問いに答えるが、「何を解決すべきか」といった本質的な課題を自ら発見することはできない。変化の激しい市場において、的確な問いを立て、AIを正しい方向に導く能力こそが、価値創造の出発点となる。
2050年には「問題発見力」が最重要
経済産業省は2022年5月に「未来人材ビジョン」を公表した。そこには、日本の労働人口は2050年に現在の約3分の2に減少し、AI・ロボット技術の進展により職種の自動化が進み、労働市場の「両極化」(高スキル・低スキル職の増加、中スキル職の減少)が進行し、高度外国人材から「選ばれる国」になる必要がある、と指摘している。
①問題発見力、②的確な予測、③革新性、④的確な決定、⑤言語スキル、⑥科学技術、⑦客観視、⑧コンピュータスキル──などを、2050年に必要な力として挙げている。
日本の入試では、与えられた問題に対して答えを書く。そこでは、AI活用に必須となる「問題を探し出す能力」は問われない。ともかく、大学時代も探究学習をベースに、課題設定能力を養いたいものだ。大学卒業後の社会は、自ら課題を見つけて、解決策を導き出し、行動する力を求めている。
大学&教育ウォッチャー 本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。
