第84回 大学・大学入試情報コラム
2025年度国公立大学入試の概要が、文科省から公表された。これによって、国公立大入試の特徴や動向がわかる。また、物価高が続き、大学生活を圧迫している中で、奨学金情報を紹介した。
2024年11月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
2025年度国公立大の「女子枠」増加!!
文科省が、「2025年度国公立大学入学者選抜の概要」(数値は7月末現在のもの)を、10月9日に公表した。そのデータによって、国公立大入試の特徴や動向が見えてくる。
2025年度は、国立81大学414学部と公立98大学223学部をあわせた179大学637学部が選抜を実施、募集人員は対前年1674人増の13万573人(国立:1079人増の9万6320人、公立:5595人増の3万4253人)となった。
また、話題になっている理工系分野における「女子枠」を設ける選抜は、前年度比2倍以上となる30大学37学部が実施。2025年度から千葉大や長崎大など、16大学が「女子枠」を新設し、倍増する。
2025年度「総合型」は過去最多を更新
次に、年内入試について見てみよう。
「総合型選抜」は、国立69大学(85.2%)343学部(82.9%)、公立56大学(57.1%)129学部(57.8%)が実施。対前年では、国立は5大学79学部増、公立は15大学44学部増と、国公立ともに過去最多を更新した。
さらに、総合型選抜での募集人員は、国立が7577人、公立が1721人の計9298人で、募集人員全体の7.1%にのぼった。また、共通テストを課す大学は、国立47大学(58.0%)144学部、公立11大学(11.2%)17学部で、公立では共通テスト免除の大学が多い。
「学校推薦型」は共通テスト課すが多い
「学校推薦型選抜」は、国立76大学(93.8%)301学部(72.7%)、公立97大学(99.0%)215学部(96.4%)が実施。対前年では、国立は1大学減13学部増、公立は1大学増。
学校推薦型選抜での募集人員は、国立が1万2924人、公立が9551人の計2万2475人で、募集人員全体の17.2%を占める。また、共通テストを課す大学は、国立60大学(74.1%)197学部、公立39大学(39.8%)77学部で、総合型選抜より多くなっている。
国公立大2次では面接を課すが多い
「一般選抜」の実施では、前期日程:国立81大学(100%)409学部(98.8%)、公立91大学(92.9%)208学部(93.3%)、後期日程:国立69大学(85.2%)281学部(67.9%)、公立63大学(64.3%)143学部(64.1%)、中期日程:公立27大学(27.6%)39学部(17.5%)となった。公立の中期日程・独自日程(4大学6学部)の実施大学数は前年と同じ。
「2次・個別学力検査等」では、面接:国立73大学(90.1%)245学部、公立77大学(78.6%)134学部、小論文:国立68大学(84.0%)186学部、公立76大学(77.6%)127学部、実技検査:国立46大学(56.8%)49学部、公立15大学(15.3%)19学部、総合問題:国立28大学(34.6%)40学部、公立19大学(19.4%)27学部、リスニング:国立7大学(8.6%)19学部、公立4大学(4.1%)6学部を実施。面接を課す大学が最も多い。
また、2段階選抜の実施予告大学は、国立:46大学(56.8%)138学部、公立:27大学(27.6%)60学部であった。
2025年度「高等教育支援制度」導入
東京大学の授業料値上げがあり、学費負担等が注目された。ここ以降では、大学生活を支援する「奨学金」について触れてみたい。
2025年度から「高等教育の修学支援新制度」が始まる。これは従来の制度を変更したもので、所得制限が撤廃され、子どもを3人以上同時に扶養している間は、所得がどれだけ高くても国が定める一定の額まで大学などの授業料・入学金が無償になる制度。
第1子が大学生の間は「3人同時に扶養している」状態だが、第1子が卒業し、社会人になると、後が2人になり、この制度は利用できなくなる。ここが注意ポイントだ。
「学生支援機構」の利用者は半数以上
奨学金と言えば、「日本学生支援機構」の奨学金が一般的で、学生の半数以上が利用している現状がある。そして、支援機構の場合、卒業後の返還も含めて、学生本人の責任において利用する形となっている。
その奨学金には、原則返還の必要がない「給付奨学金」と、卒業後に返還の必要がある「貸与奨学金」の2種類がある。さらに、貸与奨学金には、無利子の「第一種」と、有利子の「第二種」の2種類があり、基準を満たせば両者の併用も可能だ。
*詳細は、日本学生支援機構のHPで確認したい。
奨学金制度は多種多様、調査が必要
奨学金については、都道府県や市町村などが実施している地方自治体の奨学金制度、入学した大学の独自・奨学金制度(給費・特待生制度)、一般企業・財団等による奨学金制度など、いろいろなケースがある。
大学生活にお金がかかるのは事実。合格と同時に入学金が必要になり、学生生活が始まれば、授業料以外にも教科書代など勉学にかかるお金も、また自宅を離れれば、下宿代等も必要になる。
奨学金の金額、募集時期や選考基準はさまざまだが、成績優秀、品行方正といったことを条件にしているケースが多い。受験生は少なくとも1年前から調べ、準備したい。
首都圏の私立大では「予約型奨学金」
首都圏の主要私立大学では、「予約型奨学金制度」を実施。基本的に一都三県(東京、神奈川、埼玉、千葉)以外に住んでいる人が対象になっている。大学によって異なるが、給付型で年額30~50万円、学業成績優秀(評定平均値3.8以上必要など)が条件だ。
アルバイトをしながら学ぶ学生も多いが、事前に調べ、「奨学金」を活用したい。
また、最近は就活時に「奨学金の返済」を提示する企業もある。一考に値するだろう。
*国内最大の奨学金サイト「ガクシー」で事前に調べたい。
大学&教育ウォッチャー 本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。