第82回 大学・大学入試情報コラム

2024年度の“定員割れ”大学数が6割と、大幅にアップした。小規模大と女子大などが目立っている。改革を急ぐ女子大と2025年度難関国私大の変更点をピックアップしてみた。

2024年10月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

2024年度私大“定員割れ”は約6割!!
 少子化に歯止めがかからない中で、予想されたこととは言え、2024年度私立大の“定員割れ”大学数が約6割となり、ショックを与えた。9月13日に調査結果を公表したのは「日本私立学校振興・共済事業団」だ。
 対象の私立大598校の59.2%にあたる354校で、2024年度の入学者が定員を下回り、2023年度の53.3%から5.9ポイント(34校増)上昇し、悪化した。首都圏などの私立大も、初めて入学定員充足率が99.87%(前年度比1.50ポイント減)となり、入学者数が定員よりも少ない状況が増えた。
 18歳人口が前年より約3万4000人減少したこともあるが、小規模大や女子大など“定員割れ”が多い大学は、改革を迫られている。

私立大の規模・地域・学部系統別動向
 私立大の規模別でみると、入学定員充足率が対前年で上昇した区分は、「100人未満」74.93%、「1,000人以上1,500人未満」100.32%、「3,000人以上」103.71%のみ。「1,000人以上1,500人未満」、「1,500人以上3,000人未満」、「3,000人以上」の区分では、入学定員充足率が100%を超えた。「100人以上200人未満」83.37%など、小規模校を中心に定員割れが拡大している。
 地域別でみると、入学定員充足率が対前年で上昇したのは、「関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)」102.35%、「東海(愛知を除く)」90.50%、「大阪」101.46%、「兵庫」94.87%、「福岡」104.56%だった。
 学部系統別では、すべての学部系統で入学定員充足率が対前年で下降したが、「医学」、「農学系」、「社会科学系」、「芸術系」では、入学定員充足率が100%を超えた。

2025年度は女子大の改革が目立った
 2025年度入試動向でも、女子大の話題が増えている。理工系大学・学部での「女子枠導入」、女子大の「文理融合系学部・学科の新設」、女子大の「共学化」などだ。
 これからの日本を見据えて、国・文科省は理・工・農・情報科学系の人材育成を進めている。その状況下での「女子枠」は、年内入試での募集が多く、11月出願の「学校推薦型選抜」がギリでチャレンジできる。
 また、2025年度「一般選抜」では情報・データサイエンス系や理工・デザイン・建築系学部などが多く新設されている。理系に興味のあるリケジョは、挑戦して欲しい。
 女子大の「共学化」がみられ、「校名」の変更予定も目立っている。例えば、清泉女学院大⇒清泉大、名古屋女子大⇒名古屋葵大、園田学園女子大⇒園田学園大、神戸松蔭女子学院大⇒神戸松蔭大などに改称予定だ。
 「共学化」によって、女子の制限がなくなり、多様な学部の開設が可能になる。

東京大授業料アップ、京都大前期のみ
 2025年度「難関大」情報にも触れておく。
10月1日には、「東京科学大学」(東京工業大と東京医科歯科大の統合)が発足。理工系の新技術を医療現場で活用する「医工連携」などを促進するため、3つの「研究院」を新設。最高水準の研究や教育を行う「指定国立大学法人」同士の統合は初めてで、世界トップクラスの科学系総合大学を目指す。
 東京大は2025年度から、2段階選抜の予告倍率をダウンさせる。文科一・二・三類:約3.0倍→約2.5倍、理科一類:約2.5倍→約2.3倍、理科二類:約3.5→約3.0倍に変更。
 また、東京大は9月10日、授業料改定案と学生支援の拡充案を発表した。授業料を2割値上げし、10万7,160円増の年額64万2,960円とする方針を公表した。現在の在校生の授業料は据え置き、学士課程では2025年4月入学者から適用するとしている。今のところ、追随する国立大は現れていない。
 京都大は法学部で後期日程を廃止し、全学部の一般選抜が前期日程のみとなる。ちなみに、神戸大や長崎大などでも、一部の学科や専攻で後期日程廃止の変更がある。

難関私大の「共通テスト利用」が難化
 難関私立大では、国立大受験者の取り込みを狙った入試の変更点が多い。私立大の「共通テスト利用入試」をチェックしてみよう。
 早稲田大は、2021年度に政治経済学部で共通テストの数学を必須にして、一部受験生に敬遠されたが、結果的に優秀な学生を集めることができ、一定の評価がなされている。
 その影響か、2025年度の社会科学部は、一般選抜を大きく変更。従来の3教科型の方式を廃止し、共通テストと独自問題による併用方式を導入する。
 同様の方向とされるのが、青山学院大・国際政治経済学部で、数学を必須とする共通テスト5科目型が新設される。同学部では、この他にも複数の方式が用意されているため、早稲田大・社会科学部のような、急激なレベルアップとはならないだろう。しかし、今後も難関私立大を中心に、教科を多く課す方式の拡大が予想される。
 このほか慶應義塾大・医学部では第1次試験を2月9日実施としており、前年から10日前倒しとなる。これは、大きな変更点だ。また、同大の経済学部では、学校推薦型選抜の導入に伴い、一般選抜の募集人員を30人減としており、一般選抜は難化しそうだ。
【出典】2024年度私立大の定員割れデータ:「日本私立学校振興・共済事業団」のHP

大学&教育ウォッチャー  本間 猛
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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