第78回 大学・大学入試情報コラム

志願者減少の女子大が、ついに改革に動いた。新しい学部・学科を設置し、志願者が少ない学部を廃止へ。しかし、新学部の設置も容易ではない。「定員充足率」を高める壁もある。

2024年7月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

女子大の「学部新設」申請が目立った
 文科省は「2025年度開設予定の学部等の設置届出一覧」(6月20日:4月分②)を公表した。それによれば、大学の学部設置は21校27学部33組織、大学学部の学科設置が14校18学部33学科に及んだ。中でも学部設置21校のうち女子大が57.1%の12校を占めた。
 これは、女子の総合大学志向によって女子大離れが始まり、人気が低迷し、定員割れが続く等による「女子大の苦境」を表している。ここで改革・改組・新学部設置等を断行しない限り、「存続すら危うい」という女子大の危機意識の現れだろう。

女子大は人気回復を目指し学部新設
 今回の女子大12校の学部設置申請は、実践女子大環境デザイン学部(定員81人)、清泉女子大総合文化学部(230人)・地球市民学部(100人)、日本女子大食科学部(88人)、駒沢女子大空間デザイン学部(70人)、田園調布学園大子ども教育学部(80人)、フェリス女学院大グローバル教養学部(545人)、岐阜聖徳学園大人文学部(150人)、愛知淑徳大教育学部(140人)・建築学部(130人)、甲南女子大心理学部(90人)、神戸常盤大看護学部(85人)、神戸女学院大生命環境学部(80人)、くらしき作陽大健康スポーツ教育学部(60人)となっている。

これからはDX・GXから目を離せない
 ここで12校分の全てを紹介したのは、女子大の新しい学部の動向が垣間見えたからだ。一般的な子ども教育学部や看護学部のほかに、リベラルアーツ的な学部や理工的な学部まで申請された。
 また、設置申請4月分①では、大妻女子大データサイエンス学部(90人)、安田女子大理工学部(180人)が公表されており、文理融合の情報系や理工系が注目された。
 つまり、データやデジタルを活用するDX(デジタルトランスフォーメーション)の分野や化石燃料から太陽光発電、風力発電などのクリーンエネルギーを目指すGX(グリーントランスフォーメーション)の分野が世界的に拡大することを予測している。

「新学部」の設置はハードルが高い
 志願者が少ない学部を廃止して新しい学部を設置するにしても、大学側にとってハードルは高く、かなりの難題なのだ。新学部の設置には、前提として志願者を増やし、大学運営を安定化させることが求められる。
 一方で、「定員充足率」が著しく低い大学は、私学助成金がカットされるから、この事態は避けなければならない。因みに、日本私立学校振興・共済事業団によると、2023年度全私立大の定員充足率は53.3%で、かなり高かった。女子大がどこまで含まれているか定かではないが、気になるところだ。
 また、助成金は学生数が基準となるから定員は減らしたくない。さらに、新しい学部を設置するからと言って、人件費等を考慮すると、新規の教員を増やすのも容易ではない。逆に、教員のカットも難しい。さりとて、現教員のテリトリーだけでは、大胆な改革にはならない可能性が高いのだ。

「文学部」の廃止はちょっと寂しい!!
 先の女子大12校には新学部設置に伴って、冠だった?「文学部」を廃止する大学が2校もあり、少し寂しい。清泉女子大とフェリス女学院大だ。奇しくも2校ともミッション系の大学であり、グローバル・英語系へのシフト替えは抵抗が少なく、頷ける部分が多い。
 女子大トップの東京女子大も、リベラルアーツ教育を進化させるため、「現代教養学部」を国際社会や経済経営、情報数理科など6学科の新体制に改組すると申請した。
 女子大の長い歴史の中で、「文学部」と「家政学部」の設置は定番だった。「良妻賢母」の育成に寄与してきた女子大「文学部」も、時代の流れ、要請とは言え、終焉に近づきつつあるようで、感慨深いものがある。

「総合選抜」で急ぎレベルを下げない
 「年内入試」について毎回のように触れているが、ここではちょっと苦言を呈しておきたい。特に、「総合型選抜」においては、出願時に「憧れの大学かどうか」を必ずチェックしたい。
 合格切符を早く手に入れたいばかりに、1ランク下の大学に合格していないか、と危惧しているのだ。自分自身のキャリア形成のためにも、安売りすることはない。一般入試の受験生が減少している現状においては、合格しやすくなっているはず。来年2月まで頑張り、自分の学歴を高める方向で、安易に流れない姿勢を貫くことが、今後の人生においてプラスになるだろう。

得意科目の「配点比率」が高い大学!!
 志望大学を決める時期に来ている。決定時に注目したいポイントを紹介しておこう。
① 「併願」ポイント:必ず2~3校は併願するはず。入試科目は併願校も同じにする。負担を増やす場合は、併願しない。
② 「配点」ポイント:国公立大は新課程入試の配点も公表している。そこで、自分の得意科目の配点が多い大学を選択し、受験するのも1つの方法。
 例えば、英語の配点比率が高い大学は、山口大理学部:前期・配点比率63%。数学⇒埼玉大理学部:前期・配点比率64%。国語⇒東京学芸大教育:前期・配点比率61%。
 自分の志望大学候補校を、入試要項を見ながら、配点比率を計算し、チェックするようにしたい。

大学&教育ウォッチャー  本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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