第53回 大学・大学入試情報コラム

2023年2月25日、「前期日程試験」が実施された。
「情報系」「データサイエンス系」「文理融合系」が新増設され、
話題を集めた。国公立大学受験者の動向は? 注目された学部の倍率は?

2023年3月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

前期日程志願者23万1450人、2.9倍
 国公立大2次試験の前期日程が2月25日、コロナ禍が続くなか全国で始まった。文科省が21日に公表した「2023年度国公立大学入学者選抜確定志願状況」によれば、171大学590学部が実施。志願者は23万1450人(前年:23万3996人)で、募集人員に対する倍率は前年と同じ2.9倍だった。
 また、「大学入学共通テスト」の結果での門前払い、「2段階選抜」を前期日程で実施したのは東京大(691人)、東京工業大(438人)、福島県立医科大(338人)など34大学56学部で、3623人が不合格となった。

全志願者数は2001年以降で過去最低
 前期・後期・中期日程を合わせた2023年度の全志願者数は42万3180人で、前年度42万8656人より5476人減少し、記録が残っている2001年以降で過去最低となった。因みに、倍率は志願者数が減ったものの、4.3倍で前年と同じ。
 2023年度の日程別高倍率1位大学は、国立大前期日程:東京芸術大・美術12.3倍、同後期日程:宮崎大・医46.2倍、公立大前期日程:周南公立大・福祉情報27.0倍、同後期日程:新見公立大・健康40.5倍、同中期日程:周南公立大・福祉情報46.6倍だった。
 前期日程のトップ東京芸術大は前期高倍率の常連大学、周南公立大は徳山大から公立化して2年目、山口県東部や広島県からの受験生が増えたのが要因とみられている。また、後期・中期日程は、前期の合格手続き者が抜けることにより、倍率は大幅にダウンする。

データサイエンス・文理融合系は好調
 2023年度「共通テスト」の特徴は、数学の平均点が、前年の大幅ダウンから、アップしたことだった。強気の2次出願が予想された。
 また、生物の得点の低迷が注目されたが、得点調整が行われ、選択者が多い「薬学部」や「看護学部」の受験生は救われたと見られる。
 志望動向では、「情報系」「データサイエンス系」「文理融合系」が増加すると注目された。それらの関連学部の志願状況を見てみよう。
 新設の一橋大・ソーシャルデータサイエンス前期は募集人員30人、出願者数182人で6.1倍、後期:同25人、同644人で25.8倍、同じく新設の名古屋市立大・データサイエンス前期は募集人員50人、出願者数134人で2.7倍、中期:同82人、同1273人で15.5倍、後期:同174人、同1414人で8.1倍だった。両大学とも他学部より高い倍率となった。
 文理融合系の和歌山大・社会インフォマティクス学環前期は募集人員20人、出願者数115人で5.8倍。和歌山大の同学環は、「経済、産業、文化などの社会に対して、変革をもたらす情報技術により分析、把握を実践する人材の育成を目的とした教育課程」としている。今後、他大学においても「文理融合系」は増えそうだ。

学部系統別志願倍率1位は薬・看護
 ここで、「国公立大学入学者選抜学部系統別志願状況」を見てみよう。志願倍率を学部系統別にみると、①「薬・看護」5.2倍(前年:5.1倍)、②「医・歯」4.8倍(前年:4.6)、③「その他」4.4倍(前年:4.6倍)、④「人文・社会」4.4倍(前年:4.5倍)、⑤「農・水産」4.2倍(前年:4.1倍)、⑥「理工」4.2倍(前年:4.3倍)、⑦「教員養成」3.6倍(前年:3.5倍)。
 系統別の倍率を見た限りでは、「薬・看護」、「農・水産」とも志願者数は前年より増えており、生物の平均点停滞については、調整が有効だったらしく影響はなかった。前年よりアップしたのは、「薬・看護」、「医・歯」、「農・水産」、「教員養成」だった。
 また、大学別に見ると、東京工業大(4.5倍)、一橋大(5.0倍)、京都大(3.0倍)等で志願者数・倍率とも、前年を上回った。東京工業大は東京医科歯科大との統合、女子枠の導入等で、話題になったのが人気に繋がったとみられる。

「IT人材の不足」が深刻、養成が急務
 一方、私立大学の動向も気になるが、各私立大学の入試関連情報の集計は4月以降となるため、順次判明次第、分析し情報提供する。
 最近、気になったこと──。日本は極東アジアの中で、IT化・デジタル化が最も遅れた国になってしまった。政府や文科省は進取・拡大に躍起だが、先に紹介したように大学のデータサイエンス学部の新増設等は、昨今の話である。
 2030年にはITを担う人材が、最大79万人不足し、社会基盤に混乱が生じるという予測がある。文科省はデジタル系の学部・学科に限って、人材不足を補うため、東京23区内の大学の定員規制を緩和する方針という。
 また、2025年度共通テストでは「情報Ⅰ」を課すことになっているが、北海道大、徳島大、香川大などは点数化しない方針を打ち出している。しかし、これは受験生を惑わせ、早急なIT化の流れを阻害することになるかもしれない。とかく権威主義的な発想は、往々にして独善で、進化を妨げることがある。
 小学校低学年の英語の導入にしても、早く実施した韓国は、英語力を伸ばしていると聞く。日経新聞が、「韓国よりTOEIC平均点が100点低い」と指摘した。(日経新聞2/22)
 少子化、グローバル化の中で、日本人が生き延びるためのスキルは、「英語力」「IT力」「数学力」であり、世界共通の言語となるような技術分野を早くマスターすることだ──。

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