大学・大学入試情報コラム
2026年度共通テストのWeb出願は、問題がなさそう。国公立大学の募集要項も公表され、2026年度入試の変更点・特徴も見えてきた。私立大の指定校制は、将来を見据えて慎重に決めよう。

Web出願の初日は対前年で減少した
大学入試センターは2025年9月16日、受け付けを開始したWeb出願元年の「2026年度共通テスト」初日の出願状況を公表した。同日午後5時時点における出願総数は2945人で、郵送による受付だった前年度の1万400人と比べ7455人減となった。
出願総数の2945人の内訳は、高等学校等卒業見込者が1490人で前年度比7866人減、高等学校卒業者等が1455人で前年度比411人増となった。最終的には、前年並みか、減少が予想されている。個人出願のため、地方高校の全員受験スタイルが崩れる可能性がある。ともかく、初めての体験だった高3生は、高校サイドの指導もあり、「訂正しやすく、出願しやすく、すごくいい」の反応だった。
共通テスト「情報」の扱い変わる大学も
2026年度国公立大入試の特徴、変更点等についてチェックしておきたい。(文科省:8月29日設置認可)
【学部等の新増設・改組】国立大:山口大-情報、佐賀大-コスメティックサイエンス学環、熊本大-共創学環。公立大:旭川市立大-地域創造、長野大-共創情報科、福井県立大-地域政策、岡山大-夜間主コースの募集停止。
【学部の改組・再編】山形大:地域教育文化学部→教育学部に改組、長野大:企業情報、環境ツーリズム→地域経営学部に再編。
【女子枠導入】新設:京都大、大阪大、公立小松大。拡大:新潟大、広島大など。
【共通テスト・情報の変更】北見工業大-前期で情報を選択→必須、北海道大-前・後期で共通テストの情報を配点化など。
このほか、2段階選抜の変更・学科の再編・日程・募集人員・入試科目の増減・学外試験会場の変更などに注意したい。
首都圏私立大で「基礎学力型」が増加
9月~12月は「年内入試」のシーズン。総合型選抜、学校推薦型選抜の出願から合否発表までが一気に進む。私立大学を中心に、進学希望者の約6割が合格を決めてしまう。
2026年度年内入試の特徴は、東洋大学に象徴される「基礎学力テスト型入試」(文科省が小論文、面接等複数の評価方式を組み合わせることを条件で容認)だ。
首都圏では2025年度14大学で実施されたが、2026年度は東洋大、大東文化大、大妻女子大、昭和女子大、拓殖大、玉川大、立正大、神奈川大など23大学に増加した。これらの大学の募集要項を見て気になったのが、内容の分かりづらさだ。受験生が正しく理解、把握できない場合は、大学に早めに問い合わせるようにしたい。
「入学金の二重払い」是正は4校のみ
文科省は6月26日、全国の私立大学に通知を出し、その後吉村洋文大阪府知事のプッシュもあったが、「入学金の二重払い」の是正、対応はどのように推移したのだろうか。現在のところ、私立大の反応は鈍い。
9月現在、対応をした大学はわずか4校。美作大(岡山県)が7月、国公立大合格による辞退者に入学金全額を返還すると発表。8月には桃山学院大(大阪府)が、入学申込金の約8割を返金する併願入試の返金制度と、入学申込金の分納制度を新設すると明らかにした。
また、新潟工科大と新潟産業大(柏崎市)も8月、入学辞退者の学納金返還(詳細は大学に確認)を公表した。ともかく、物価高で家計が圧迫される中、改善を求める声が上がっていたが、残念な結果となっている。
定員割れ大学は「指定推薦枠」が多い
文科省の調査では、2024年度の国立大で総合型選抜による入学者が占める割合は6.1%、学校推薦型選抜は12.4%、一方私立大では総合型19.0%、学校推薦型40.3%に及ぶ。
私立大の学校推薦型には、「公募制」と「指定校制」があるのだが、合格者は格段に指定校制(専願が多く、必ず入学するが前提)が多い。人気のない定員割れに陥っている大学は、学生数を確保したいため、多くの志願者を指定校推薦で入学させる傾向にある。
ともかく、「早く大学に合格したい」だけの思いが強くなりすぎると、入学後に後悔することにもなりかねない。
難関大の「指定校制」は選考が厳しい
難関といわれる早慶上理、GMARCHなどの人気大学では、少ない推薦枠をめぐって上位、中堅の高校では厳しい選考が行われる。高校では難関大の推薦枠を減らされないように、次年度にも繋がるように優秀な生徒を選ぶ。また、入学したら高校の後輩のためにも、学業に専念するようアドバイスしている。
志望理由書、成績(評定平均値)のほか、最近では指定校推薦でも、大学から指定された本を読んでレポートを書くといった課題の提出が求められるケースが増えている。
一方、中堅・下位校では、大学中退者が増えていると聞く。要因としては、大学名ばかりを重視して、選んだ学部・学科とのミスマッチで、学ぶ意欲がなくなるケース。また、理系では、学力が及ばず卒業ができそうにない場合もある。慎重に選びたいものだ。
進路・学部選択は大括りからスタート
大学・学部選びに迷う高校生や、アドバイスできない保護者が多いという。高校までは学ぶ内容に学校差はないが、大学では違ってくる。大学からの学びは、自ら学びたい内容を選び、自分で選択する必要がある。
2025年度の大学数は812校、学部は2611部もあり、受験生はこれだけ多くの選択肢から希望に合う大学を選ぶ必要がある。さらに、大学選びは将来のキャリアを決めていくうえで、職業や人生に直結する重要な選択だ。
最初は「文系か理系か」「どのような学問分野なら関心があるか」など、興味のある分野から広げて、進路を探す方法もある。また、「人文学系」「社会科学系」「自然科学系」といった、大きな括りを見たうえで、興味のある分野を絞り込んでいくこともできる。焦らずに、打ち込める仕事を見つけ、生き甲斐の感じられる、夢のある人生を目指したい。
大学&教育ウォッチャー 本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。
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