大学・大学入試情報コラム

2025年度の私立大の定員割れは53.2%で、18歳人口の一時的な増加もあり少し好転した。しかし、27年度からまた減少する。一方、Z世代の台頭により、入試も社会も変わり始めている。

私立大の定員割れ53.2%、やや改善
 日本私立学校振興・共済事業団は8月8日、4年制の私立大で、2025年度の入学者数が定員を下回ったのは、全体の53.2%にあたる316校だった、と公表した。
 過去最高の59.2%だった前年度より38校少なく、5年ぶりに改善した。これは18歳人口の一時的な増加や募集人員の調整などが要因とみられるが、今後も少子化が進む中、地方や小規模の私立大や女子大などにとっては、厳しい経営環境が続くだろう。
 2025年度の入学定員充足率は、すべての地域で前年度より改善したが、東京・大阪・愛知など「三大都市圏」の103.18%に対し、そのほかの地域は96.30%にとどまった。規模別では、定員3000人以上の充足率105.85%に対し、定員100人未満79.74%、100人以上200人未満86.90%だった。

「教育活動収入計」減の法人は55.6%
 定員割れが続けば、私大の経営が悪化するのは明白だ。読売新聞は8月19日、東京商工リサーチの調査データを分析し、2023年度全国543私大経営法人のうち253法人(46.6%)が赤字と報じて話題となった。
 因みに、赤字の法人が占める割合は21年度が34.2%、22年度が40.8%で毎年悪化している。2023年度に赤字だった253法人のうち、3期以上にわたって赤字が続いているのは139法人(54.9%)に上った。
 2023年度に調査対象とした543法人の売上高にあたる「教育活動収入計」の合計は、22年度比0.1%減の6兆7067億円でほぼ横ばいだったが、減収は302法人(55.6%)と半数を超えた。利益の合計は同30.8%減の2178億円で、大幅に減少した。

赤字法人は四国が77.8%で高かった
 赤字法人が占める割合を地域別に見ると、最も高かったのは四国で77.8%。以下、北陸66.7%、東北60.0%、中部55.4%などと続いた。関東40.6%、近畿は42.2%だった。
 法人別の売上高(教育活動収入計)は、「順天堂大」の2114億円がトップで、「日本大」(1903億円)、「慶應義塾大」(1772億円)、「近畿大」(1490億円)の順で、医学部や附属病院を持つ法人が上位を占めた。医学部を持たない法人では、「早稲田大」の1039億円が最高だった。

特色ある研究や教育を提供する大学
 入学しても、卒業までに大学が倒産したのでは意味がない。そんなトラブル、リスクを避けるには、どこに注目したらよいか。
 前提条件は少子化である。2025年度の18歳人口は109万562人、対前年で2万7111人増えたが、27年度から再び減少に転じ、2040年度には約74万人まで減少すると推計されている。これは、大学の経営が年々悪化し、今後は淘汰や再編が一層進むことを意味する。
 大学選択のポイントは、「学びたいテーマがある大学」「大規模大学」「特色ある研究や教育を提供している大学」「就職など学生が直面する課題に寄り添う大学」を中心に、他大学との差別化が明確になされている大学だ。

「Z世代」の社会生活や価値観の変化
 高校生の進路指導等においても、Z世代の価値観等を理解しておく必要がありそうだ。そもそもZ世代とは、2025年現在、約12歳から30歳前後が該当し、デジタル技術やインターネットが普及した環境で育った「デジタルネイティブ」であることが特徴である。
 つまり、物心ついた時からスマートフォンやSNSが身近にあり、情報収集やデジタルコミュニケーションに長けている。最近の全国規模の選挙を見ても分かる通り、情報源が従来とは大きく異なってきている。
 この呼称は日本だけでなく、世界的に使われており、SNSやインターネットを通じて世界中のZ世代が同じ情報や文化に触れる機会が多いため、SDGsなど国境を越えた価値観に関心を示す行動様式が見られる。
 特徴は、多様性と包括性を重視し、環境問題や社会課題への関心が高く、仕事・生活のバランスを重視し、プライベートの時間を大切にする。また、安定志向で、人との和や既存の社会秩序を重んじる傾向がある。

「インフルエンサー」で生計を立てる層
 平成の時代と比べれば、今は圧倒的に若者人材が不足していることで、就活は売り手市場になっている。その状況下でも、Z世代は高学歴集団の大手企業を目指す人が多い。
 大企業に就職することは、学歴重視社会では結果的に、社会人になってから出会う知人の質も同様に担保される。また、好待遇の大企業に入社するというのは、人生を圧倒的に有利にすると認識しているからだ。
 しかし、最近は学歴を気にしない、新しい価値観を持つ人々も台頭し、社会で一定数を占めてきている。ITに関心を持ち、SNSを始め、偶然ではなく論理的にフォロワー数を増やし、インフルエンサーとして生計が立つようになり、安定して年収が2000万円を超えるような人達の層が生まれつつある。
 これだけの収入額を得るのは容易ではないが、Z世代が自由業として、新しい層を誕生させると予想する人は多い。このような社会の動きにも、注目する必要があるだろう。

「駿台」が大学合格者数の公表を終了
 駿台予備学校(駿台)を運営する駿河台学園が8月1日、2026年度大学入試から、合格者数の公表を取りやめると発表した。同学園は理由として、オンライン学習が普及し、複数の塾や予備校を掛け持ちする形となっている生徒が多いことを挙げた。
 各予備校が公表している合格者数を合計すると入学定員を超えており、予備校ごとの成果が分かりづらくなったと説明する。昔は、公開模試を受けただけ、自己採点に参加しただけで、予備校の出身者にされたといったウワサもあったが、この公表中止が1つの時代の終焉を物語っているのかもしれない。

大学&教育ウォッチャー  本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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