第96回 大学・大学入試情報コラム
夏季は入試情報の少ない時期。日頃気になっている、入試情報のあれこれをピックアップしてみた。「英語資格試験」がなぜ大学から信頼されるのか、また、2027年秋開設の東京大「新学部」は?
2025年8月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
私立大の多くが「100円朝食」を実施
最近の物価高は凄まじく、学生生活にも大きな影響を与えている。食事代もままならぬ学生へのサポートとして、「100円朝食」は殆どの私立大学が実施中、若しくは実施したことがあるようだ。
2025年度志願者数1位だった千葉工業大は6月16日、全学生約1万500名に学食で使える5000円分の食券を配布して話題になった。2025年12月23日まで使用でき、学生共済会・同窓会・大学の三者連携による取り組みだという。
立命館大も「100円朝食」を実施。京都市北区の衣笠キャンパスの食堂は、平日の午前8~9時に提供し、ご飯とみそ汁に小皿2品がつく。7月1日は揚げ餃子、春巻き、コロッケ、オクラの塩だれ、ひじき煮、きんぴらごぼう、ポテトサラダ、納豆などだった。
首都圏私立大生の生活費1日653円
物価高の中、首都圏の私立大学で学ぶには、どれだけ経費がかかるのだろうか。
東京私大教連が「2024年度新入生の家計負担調査」を、早稲田大・明治大・中央大など東京6校、埼玉1校、栃木2校の大学で行い、2025年4月に結果を公表した。数字は、自宅外通学と自宅通学に分けられている。ここでは、ポイントについて紹介する。
【1】自宅外通学者の「受験から入学までの費用は、231万円で過去最高を更新。(内訳⇒受験費用:27万3800円+家賃:6万8900円+敷金・礼金:25万1700円+生活用品費:35万5100円+初年度納付金136万5281円=231万4781円) |
【2】毎月の仕送り額8万8500円で低水準にとどまる。家賃を除いた1日あたりの生活費はわずか653円。 |
【3】入学費用の「借入額」は203万円で過去最高の高負担。 |
【4】奨学金の希望者は約6割に迫っている。 |
1日の生活費653円の中に3回の食事代が含まれるのだから、大学の100円朝食は大いに助かることになる。現実には、期間・時間・食事数が限定されるケースが多いから、学生にとって物価高は厳しい現実だ。
「奨学金」は高3の4~7月に申し込む
全体の奨学金希望者は58.1%だったが、実際に「申請した」は53.1%に減少。理由は、申請基準に合わない、返済の不安等だった。
奨学金の利用を予定しているのであれば、予約採用は高3の4月~7月末の間に申し込みができる。進学後に大学を通して申し込む「在学採用」では、4~5月分の奨学金がまとめて「6月」に振り込まれるから、4~5月分の生活費が別途必要になってしまう。
因みに、貸与型奨学金の返済は、貸与が終わった月の翌月から数えて7か月目からスタートする。大学を3月に卒業した場合は10月27日になり、自分が指定した銀行口座から引き落とされる。
英語資格試験スコアで入試は有利に
2026年度も私立大学年内入試の志願者が増加すると予想されている。その中でも「総合型選抜」や「指定校推薦」では、英語資格試験の級やスコアが重要になっている。
志望理由書はAIを参考にして書き、評定平均値がアテにならないとなると、大学が頼れるのは英語資格試験のスコアとなる。中学時代から英語に興味を持ち、資格を取ってきた受験生の学力は信頼できるというのだ。
今は、英検準1級があれば「早慶上智ICU」や「MARCH」でもアドバンテージが得られ、英検2級があれば「日東駒専」では合格に直結し、有利になっている。
英検が大学に信頼されているワケは?
以前の英検は、資格が級表示でアバウトだと指摘されたこともあったが、2016年以降は級もスコアも表示、さらに2025年からは英検準2級プラスも新設され、入試英語のチェック力が充実してきた。
英検・CSEスコアは国際基準規格のCEFRに対応し、またユニバーサルなスコア尺度「CSE(Common Scale for English)」を英検各級で表したスコア(数値範囲:0~4000)を指している。つまり、よりグローバルな視点で英語力を測れるようになった。これが大学の信頼を得ている要因のようだ。
学習評価の「主体性」の比重を小さく
文科省は7月4日、学習指導要領の改訂を議論する有識者会議で、成績の基となる学習評価の観点を見直す方針を示した。機械的な評価に陥りやすかった、「主体性」の比重を小さくする。
主体性の評価は、客観性を担保するのが難しいという実態があり、4.0の評価が頻発した。「挙手の回数」「宿題の提出状況」などをチェックして、真面目にやっていれば、「主体性あり」の評価になったというのだ。
これからは3つの評価観点のうち、主体性を「思考」に組み込んで2つに再編する考えだ。評定の算出方法は2つになっても変わらないが、特に主体性があると評価できる場合に限って、「○」を付けられるようにする。
東京大学が5年制の新学部を発表!!
東京大学は7月11日、2027年秋に開設する5年制の新学部「カレッジ・オブ・デザイン」(学部長予定:マイルス・ペニントン教授)の入試概要を発表した。
主に日本の高校生を想定した「A方式」と、海外からの留学生を想定した「B方式」の試験を設け、各50人ずつ、計100人を選抜する。(新学部の開設に伴って、他学部の27年度入学生向け一般入試から募集人員を計100人削減する。)
カレッジ・オブ・デザインは、学部の4年間と大学院修士課程の1年間を合わせた文理融合の学部。欧米の有力大学で主流の秋入学とし、授業はすべて英語で行う。
募集要項は2026年8月頃に発表し、同年秋に出願を受け付ける。合格発表は翌2027年の2~3月を予定している。ただし、東京大の推薦入試や一般入試との併願はできない。
大学&教育ウォッチャー 本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長