第94回 大学・大学入試情報コラム

2025年度入試の状況分析が公表され、いよいよ2026年度入試がスタート。初めに来るのは増加する年内入試。学校推薦型選抜、総合型選抜での「OK行為」「NG行為」とはいったい何か?

2025年6月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

志願者数最多増の国公立大は都立大
 5月に入り、大手予備校などが新課程導入で注目された「2025年度国公私立大入試の状況分析」を公表した。2025年度を総括して、2026年度入試に移行する例年の流れだ。
 2025年度国公立大入試の特徴で目立ったのは、志願者数の増減。対前年度で最も増加したのは東京都立大(1,411人増)で、千葉大、横浜国立大など南関東の大学が増加した。
 一方、最減少したのは鳥取大(1,191人減)で、島根大、山口大など中国地方の大学は毎年増減を繰り返す傾向が見られた。また、東京都立大では授業料の無償化の所得制限撤廃などが影響したようだ。

志望校は系統別志願状況を参考に!!
 2025年度私立大一般選抜の「系統別志願状況」(出典:駿台・380私立大集計より)を紹介。志願者数が対前年で最も増加したのは、歯119%、スポーツ・健康114%、法111%、経済・経営・商109%、国際関係・理108%、人文科学・外国語・保健衛生・工・農水産106%、生活科学105%、社会・芸術104%、教員養成・教育102%、医100%など。
 一方、2年連続で減少したのは、薬98%だった。私立大で歯が増加したのは、岩手医科大のほか、大学名の変更で大幅増加した昭和医科大や愛知学院大などが影響した。
 受験生の志望校選定や高1生の文理選択を決める時期に来ている。上記の系統別志願状況も参考にしながら、悔いのない志望校選定や進路選択をして欲しいものだ。

「プロスポーツ」が一大産業化している
 スポーツ・健康系統の志願者増が物語る、日本スポーツ界の隆盛と大学について私見を述べてみたい。昭和世代まではプロスポーツと言えば、野球・ゴルフ・相撲・ボクシングぐらいしかなかった。平成3年(1991年)にサッカーのJリーグが誕生して一変し、大学のスポーツ科学とともに発展した。
 文武両道の部活から、プロへ進む志望者が増えた。職業としてのスポーツが増加したことで、家庭や社会の理解が進み、遊び感覚がなくなり、大学でのスポーツ分野も進化した。従来の監督・コーチ以外に、プロのインストラクターやアナリストなどを多く誕生させ、スポーツ界の裾野を広げた。
 その中心に、早稲田大スポーツ科学部があり、貢献度は高い。医学部を持たず、2部の社会科学部も有していた早稲田大がトップ私立大になったのも、看板の政経学部や理工学部の存在はもちろんだが、日本スポーツ界を牽引するスポーツ科学部があったからだ。
 ともかく、他大学のスポーツ系学部の存在も大きいが、昨今は一大産業となったスポーツ関連分野で働く人々、また世界で活躍する日本人選手の多さに驚かされる。

理系学部の「女子枠」に挑戦して欲しい
 理系学部の「女子枠」についても、考えてみたい。国公私立大の理系学部で「女子枠」を設けているが、私立大では期待したほどの志願者が集まっていないと聞く。
 日本がIT、AIの分野で、世界の中で遅れているのは事実。これを払拭するためにも、理系分野で働く女性を多くすることは必要だ。長い間、日本の女性は家庭内で家事や子育て・教育を担当する習慣があり、理系分野が弱くても支障がなかった。
 実は女性が理系に弱いのではなく、社会がそう思い込ませてきた側面がある。これを変えるには、固定観念を打ち破る教育・環境づくりが不可欠。いまや男女が共に外で働く時代、徐々に男女差も少なくなるだろう。
 間もなく高1生が直面する文理選択の折には、理系に進まなかった母親の意見は参考に留めて、少しでも理系に関心がある女子は勇気を持ってチャレンジしていただきたい。

年内入試の「OK行為」「NG行為」は?
 年内入試(学校推薦型選抜・総合型選抜)の受験者が増えており、準備もピークを迎える時期だ。その対策や心得の中での、「OK行為」や「NG行為」を紹介してみよう。また、これらの選抜では、「難関~大学」と「中堅~大学」との間に、難易で大きな開きがあり、難関大学への合格は容易ではない。
 年内入試では、生徒と親で意見が対立し、トラブル化する場合が多い。受験校の選択、合格後の入学金の二重払いなど。納得できる理由を説明しながらアドバイスを行う。また、書類提出の代行では、期限等を厳守。さらに、学校推薦型では、一般選抜の準備にも取り組ませるようにしたい。

【指定校推薦】(私立大のみ)
大学が指定した評定基準や校内での選抜をクリアできる場合は一応OK。ただし、大学名はOKでも、希望する学部でない場合は原則NG。学びたい学問があるか、慎重に決定する。高校を代表することを意識させたい。「中堅~大学」では、募集人員が多く、合格は容易だが、卒業後のことも考慮する。
【学校推薦型選抜】(国公私立大で公募制)
基準点をクリアし、所属する高校の学校長が推薦する入試。国公立大は「共通テストを課す」「課さない」の2つの場合がある。面接では話が苦手、小論文では文章下手はNG。この2つは事前練習の効果が絶大であるため、準備・サポートしだいでOK。私立大は、共通テストを課さないケースが多い。他の面は国公立大とほぼ同じ。
【総合型選抜】(志望理由書が重視される)
「共通テストを課す」「課さない」がある。「志望理由書」に入学したいという熱意を示す。また、PRできる実績や特技を持っていればOK。志望学部の研究内容や部活動の実績でもよい。大学にアピールできるものがあれば、先ずはOK。自分を売り込めないとNG。話題になった東洋大の基礎学力テストは、総合型で実施予定、6月に公表。また、早稲田大国際教養学部はAIによる志望理由書の作成を防ぐため、試験科目の1つとして実施する。
年内入試の「OK行為」「NG行為」

大学&教育ウォッチャー  本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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