第87回 大学・大学入試情報コラム

2025年度「共通テスト」「一般選抜」が実施直前だ。どんな不明点や不安があるのか。受験生や教育関係者の「気になること」をチェックしてみた。不安をなくして、共通テスト・一般選抜に臨もう。

2025年1月
大学&教育ウォッチャー  本間 猛

「共通テスト」志願者数49万5171人
 2025年1月18日・19日の2日間にわたって行われる「2025年度共通テスト」の確定志願者数が、12月6日に大学入試センターから公表された。新課程入試元年として受験生・大学・高校は勿論だが、世間一般からも広く注目されている。
 志願者数は、前年度比3257人の増の49万5171人で、前年度に続き50万人を下回った。志願者の内訳は、高校等卒業見込者(現役生)が前年度比6434人増の42万5968人、高校等卒業者(既卒者)が前年度比3246人減の6万4974人、高卒認定等の志願者が前年度比69人増の4229人だった。
 今回は、2025年度入試で、ちょっと気になることを挙げてみた。

「現役志願率」は45.5%で過去最高!!
 2025年度共通テストは、新課程に対応した教科・科目に再編されるため、不安の残る新教科「情報」を含む、7教科21科目で構成する最初のテストになる。因みに、追・再試験は1月25日、26日に行われる。
 それらの不透明さの中で、2024年3月高校等卒業見込者(現役生)のうち、共通テストに出願した者の割合を示す「現役志願率」は45.5%となり、これは前年度から0.3ポイント上昇し、過去最高を更新した。臆することなく挑戦者が増えたのは、「条件は皆同じ」の気持ちが働いたからだろうか。
 また、共通テストを利用する大学・専門職大学・短期大学の総数は、前年度比26校減の838校。このうち、大学は698校(国立81校、公立95校、私立522校)、専門職大学は11校(公立3校、私立8校)、短期大学は129校(公立13校、私立116校)だった。

国語:「実用的文章」は図表の読み取り
 共通テストの教科・科目の中で、気になるのは「国語」と「情報」だろう。
 【国語】国語はこれまで2問だった「近代以降の文章」が3問になり、計5大問の構成になる。大問が増えるため、従来80分だった試験時間も、2025年度は10分延長されて90分。
 追加される「近代以降の文章」では、小説や評論とは異なる「実用的文章」の読解が課される予定だ。入試センターが公表している試作問題では、報告書やレポートといった文章のほか、複数の図やグラフなどを読み取って解答する問題が出題されている。
 対策としては、グラフや図表の読み取り演習を行う高校が多かった。しかし、受験生は「出たとこ勝負」の心境かもしれない。

情報:プログラミングが得点のポイント
 【情報】「情報Ⅰ」は2025年度から共通テストに新設される科目だ。解答時間は60分で、配点は100点。新履修科目「情報Ⅰ」では、プログラミングの基礎を扱う。
 高校では、高1のうちに「情報Ⅰ」の授業が終わっており、共通テスト対策として演習を行うのは高3から、というケースが目立っている。「情報Ⅰ」はプログラミングが得点の分かれ目と予想されているが、その演習時間が足りないと話す高校は多い。
 しかし、国立大の中には、初年度のため「試験はするが、合否評価はしない」などのケースがみられる。果たして、これらの大学への志願者が増えるかどうかが気になる。

「歴史総合」で私立大の併願が変わる
 新課程で大きく変わったのが「地理歴史・公民」だ。公民の代わりに「公共」という新科目が登場。また、これまで高校の社会では選択科目だった「地理」が、「地理総合」という必修科目になった。
 さらに、「歴史総合」が登場。これは日本史の近現代史と、世界史の近現代史を合体させて、日本は世界とどう関わってきたのか、を学ぶ科目だ。「歴史総合」が入試科目になることで、私立大一般選抜の受験生の併願動向に少なからぬ影響を与えるとみられている。
 私立大文系の「一般選抜」では、歴史総合の選択で併願校が変わってくるのだ。
 【歴史総合出題なし】早稲田大・中央大・関関同立、産近甲龍等関西の私立大など
 【歴史総合出題あり】慶應義塾大・成明独国・日東駒専等関東の私立大など

「語学・国際関係系統」が増加の傾向
 2025年度の「志望動向」が、どのような状況になっているかも気になるところだ。
 コロナ禍以降、留学が売りの「語学・国際関係学系統学部」の人気は落ち込んだが、国公立大・私立大ともこの学部系統の復活が目立つ。また、ここ2・3年は「理高文低」の傾向が目立ったが、2025年度は落ち着きをみせている。理系の女子枠は増加している。
 昨今の物価高の影響や保護者の意向もあり、「地元志向」が増加している。都会生活への仕送りが、家計を圧迫しているようだ。
 また、デジタル分野の人材育成に力を入れる文科省は「大学・高専機能強化支援事業」を行い、支援を行っている。これを受けてデータサイエンス系学部の増加が目立っている。私立大では情報系統学部新設や定員増などの動きがみられ、進学のチャンスだ。

年内の「2科目入試」容認できない!!
 私立大の「年内入試」は、増加の一途だ。2024年度「学校推薦型+総合型」による入学者は国公立大21.7%、私立大59.3%で私立大が圧倒的に多かった。
 東洋大と大東文化大は「推薦+2科目入試」の新方式を実施し、東洋大は2万人も志願者を集めた。新方式では、面接や小論文などはなく、「基礎学力テスト」として英語と国語などの試験を課した。関西では、1990年頃から取り入れられてきた経緯があった。
 これを容認しない文科省は12月24日、大学入試の実施要項で「2月1日から」と定めた学力試験の期日を順守するよう全国の大学に通知した。文科省の強い要請で2026年度以降は、この方式は実施されないだろう。

大学&教育ウォッチャー  本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。

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