第86回 大学・大学入試情報コラム
2025年度「共通テスト」と私立大の「共通テスト利用入試」について、ポイントを紹介した。年内入試もほぼ終わり、新課程元年の「共通テスト」と「一般選抜」を残すのみ。さて、結果はどうか?
2024年12月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
新課程「共通テスト」と「一般選抜」のみ
私立大学では、“年内入試”(総合型選抜:9月出願+学校推薦型選抜:11月出願)が主流になってきた。文科省の調査によれば、2023年度に私立大に入学した学生のうち、「総合型」の入学者は17.5%、「学校推薦型」が42.1%、年内入試が「一般選抜」(40.4%)を大幅に上回った。
コロナの影響で大幅に変化し、増加した社会現象として、「在宅勤務」「家族葬」「年内入試」を挙げる人々が多い。不思議なことは、これらの事象がコロナ以前の状態に戻る様子が見られず、常態化の傾向にある点だ。
となれば、入試も年明けの「共通テスト」と「一般選抜」を残すのみであり、終盤にかかろうとしている。そこで、新課程元年の2025年度「共通テスト」英語リーディングと国語の特徴・出題予測等を試みた。
共通テストの得点率目標は70%以上
初めに、新課程「共通テスト」の対策に取り組む姿勢や注意点について述べてみよう。
共通テストの出題科目は「7教科21科目」も課せられるから、全科目で高得点を取るのは容易ではない。医学科の合格には全科目で高得点が必要になるが、一般的には得点率70%以上を目標にする。
考え方としては、苦手科目を作らないことが重要だが、入試科目を自分の得意科目と不得意科目に分ける。得意科目でも、満点は難しいから得点率90%以上を目指す。
次に、不得意科目の中から効率的に攻略できそうな科目に着目し、その得点アップを目指す。日頃から得点の上がっていない科目ならば、伸び代は多いはずであり、必ずアップさせる気持ちで、諦めずに取り組む。
2025年度も英R単語数が増えるか?
共通テストの特徴の1つは、問題文の量と資料の図表・グラフ等の多さである。速読法を身につけたいという受験生もいるくらいだ。また、選択肢の複雑化もある。ともかく、時間との闘いになっている。
例えば、2024年度の英語リーディングでは単語数が増え続け、総語数は6000語を超えた。2025年度試作問題に準じると、大問数の増加が予想されるため、前年以上の語数になるだろう。受験準備では、機会をとらえて語彙を増やすことが重要になる。
また、速読を身につけるには、①スキミング(文章全体をざっと読み流してみて、大まかな内容を把握する)とスキャニング(特定の情報やキーワードを探しながら読む)を使う。②単語単位ではなく、まとまりで読んで、流れを掴む。「こういう状況なら、次はこんな内容になるのでは?」と、いくつかの流れを想像していくと内容が速く掌握できる。
【英語リーディング】の新傾向問題は?
リーディングの試作問題Aの新傾向問題では、「授業中でのスマートフォン使用に関する是非」について、複数の生徒意見を整理する問題が出された。資料やグラフなどから筆者の立場を明確にして、文章のアウトラインを組み立てさせる新傾向の問題。対策は、資料やグラフの意図を、素早く理解することだ。
試作問題Bは、「環境に配慮したファッション」に関する文章を作成する際に、教師のコメントを踏まえて推敲する新傾向の問題だった。文章の論理構成や展開に配慮して、文章を修正する力が問われた。対策としては、論理的な読解力を身につけるようにしたい。
英語リスニングは、読みの回数に注意。テーマ1・2は2回読みだが、テーマ3以降は1回読みとなる。また、読み手の対応は、音声を正しく聞き取ることに集中する。
【国語】第3問が「実用的文章」になる
国語は2025年から大問数が、旧課程の4問から新課程の全5問になる。第1問:現代文(45点)、第2問:現代文(45点)、第3問:現代文(20点)、第4問:古文(45点)、第5問:漢文(45点)に変更され、試験時間が10分増えて90分になる。
そして、これらの中の第3問が「実用的文章」になる。公開された試作問題を見た限りでは、想定される10分で解答するのは難しいかもしれない。「実用的文章+資料」で出題され、かなり時間を要する。そうなれば、教科全体のバランスを考え、他の大問が易しくなる可能性がありそうだ。
「共通テスト利用」は経費節約になる
私立大の約9割が「共通テスト利用入試」を実施している。私立大としては、共通テストを受験するような優秀な学生を入学させたい、というのが狙いとなっている。
また、受験生にとっては、一度共通テストを受験すれば、わざわざ大学まで行くことなく受験できる。入試センターから共通テストの結果データが出願大学に送られて、合否が判定される。この方式は「単独型」と呼ばれている。出願大学まで出かけて受験する必要がなく、交通費や宿泊費などを節約できるメリットがある。
このほか大学独自の試験を組み合わせて合否が決まる「併用型」があり、難関私立大ではこのケースが多く見られる。
早稲田大も青山学院大も難化する!!?
例えば、早稲田大はすでに政治経済学部、国際教養学部、スポーツ科学部で共通テストの受験が必須になっているが、新たに社会科学部と人間科学部でも、共通テストと学部独自試験を組み合わせる併用型になる。つまり、共通テスト利用が必須となる。
また、青山学院大は、文学部、教育人間科学部、国際政治経済学部の共通テスト利用で、従来の3科目型だけではなく4科目型または5科目型を新設し、ハードルをアップさせた。対策として、併用型の場合は独自試験でどのような問題が出されるのかなど、志望大の傾向を調べておく必要があるだろう。
大学&教育ウォッチャー 本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。