第72回 大学・大学入試情報コラム
2024年度入試は終わったが、結果のデータは5月ごろになる。今回は、入試の大きな特徴と2024年度に注目されている「卓越大」2回目公募の動向等を紹介してみよう。
2024年4月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
短大と女子大は大きな曲がり角
2024年度入試も終了したが、国公私立大学とも入試結果データは4~5月にかけて公表される。現況では、短期大学の2025年度以降の「募集停止」(足利短期大、上智大短期大学部、池坊短期大、武庫川女子大短期大学部など20校以上)の情報が多い。
また、女子大学も志願者の減少(日本女子大:対前年84.9%、京都女子大:同75.2%、武庫川女子大:同79.2%など)が目立ち、方向転換が「待ったなし」の状況となっているようだ。共学化をするのは、東京家政学院大、神戸松蔭女子学院大など。
明確になった受験者層の「二極化」
入試データが出揃わない状況だが、2024年度の特徴は、「年内入試の志願者増」と「受験者層の二極化」ではなかろうか?
共通テストが導入されて以降、資料・グラフ等を含めた問題量の多さや難化で、共通テストを敬遠する受験層が増えてきた。また、早めに合格を手にしたい層が多くなり、「年内入試」が盛んになった。
一般入試まで難関大を狙う受験生と、一般的な大学を最小限の努力で手に入れようする受験生に二極化した。勿論、年内入試は総合型選抜と学校推薦型選抜によるルートだ。
総合型と推薦型の対策ポイントは、「早期準備」(高2から)、「評定4.0以上」(難関大狙い)、「英語力強化」(英検2級)、「活動実績」(部活、ボランティア等)、「将来の学びへの意欲」(熱意の継続)などになる。
2026年度京都大も「女子枠」を導入
京都大は3月21日、2026年度入試から、理系2学部(理学部15人、工学部24人)で「女子枠」を計39人分設けると発表した。因みに、理学部は総合型選抜、工学部は学校推薦型選抜になる。現在、学部生の女性比率は理学部7.9%、工学部10.1%。女子枠を設けることで、開始数年で15%ほどの比率を目指すという。
2024年度入試で「女子枠」を導入・実施した大学は、東京工業大、名古屋大、東京理科大など40大学、定員約700人だった。
「女子枠」入試は一般入試とは別に、女子学生のみを対象とした学校推薦型などで実施する大学が多い。理工系学部での女子の比率を高めるためや、大学の多様性を確保することなどを目的に取り入れられているものだ。
2018年度から女子枠を設けている芝浦工業大は、女子比率が16.4%から2023年には19.8%にまで上昇した。2024年度実施大学の、入試結果が注目されている。
東京大は秋入学で卓越大に再挑戦
東北大は全方位への国際化で、すでに「国際卓越研究大学」(卓越大)の認定候補に選ばれている。1回目に漏れた他の大学は、2024年の2回目公募に向けて動き出している。
東京大は2月19日、2027年秋に文理融合型で5年間一貫の教育課程を新設する方針を決めた。世界水準の研究職の育成を目指し、定員100人で授業は全て英語で行う。生物多様性や気候変動など、難しい課題に向き合う。また、秋入学で国内外から優秀な学生の獲得を目指す。
早稲田大も全学の研究力強化をトップダウンで進める司令塔「グローバル・リサーチ・センター(GRC)」を2024年4月1日に新設し、公募第2弾に立ち向かう。
新しい「東京科学大」がトップを狙う
2024年10月1日、東京工業大と東京医科歯科大の統合によって、「東京科学大学」が開学する。まだ、新大学の統治、構成などをはじめ、入試の変更点、また東京工業大の学部と大学院を合わせた「学院」制度や、導入した女子枠を今後も継続するのかなど、公表が待たれる。
これまでの両大学は、広く理工学および医歯学に関する学知と技術、それを自在に応用できる人材の育成を通して、産業の発展と医療の進歩をけん引してきた。早くも、「日本でトップレベルの大学になる」と期待されており、当然のこととして「卓越大」に挑戦するだろう。
今の日本を救うのは教育しかない
世界大学ランキング2024年版で、日本最上位の東京大は29位、次いで京都大は55位だった。これをアップさせるために、「卓越大」構想がある。文科省は3月7日、世界トップレベルの研究力を目指す「卓越大」について、大学のガバナンス(組織統治)を求め、枠づくりに懸命さを見せ、大学の尻を叩いている。
「今の日本を救うのは、教育しかない」のだが、残念ながら殻を破れないでいる。日本のトップに東京大がいると、妙な安心感があるようだ。また、日本では難関の大学入試を突破し、大学を卒業して就職すると、「これで勉学は終わり」のイメージが強く、これ以降学ぶことをしない。これでは、世界的に評価されない。
国際機関で働くには修士号は必要
少子化の中で、これからの日本人が世界で活躍し、グロ―バルな社会を生き抜くためには、せめて修士課程(2年間)まで学び、「修士」(マスター)の学位取得者を増やす必要がある。
例えば、国連の職員になるには、「国連職員採用競争試験」の合格が近道だが、この試験の応募資格は修士号取得者となっている。一般的に、国際機関で働くには堪能な語学力に加え、修士号を持っていることが採用条件の1つになっているケースが多いのだ。
本間 猛:
東京理科大学理学部数学科1964年3月卒(参考 昭和39年:東京オリンピック・新潟地震)。元(株)旺文社取締役。中学・高校雑誌編集長,テスト部長,関西支社長等を歴任。