第9回 大学・大学入試情報コラム
「緊急事態宣言」下で、「共通テスト」を実施!!
「第1日程」1月16日・17日の動向は、どうだったのか?!!
大きなトラブルもなく、「前年並み」の結果に、次年度の対策法も見えた!!
2021年2月
大学&教育ウォッチャー 本間 猛
「共通テスト」結果に受験生も安堵?!!
初めての「共通テスト」(第1日程)は21年1月16日・17日に、一部の都府県で2度目の「緊急事態宣言」を迎えた中で実施された。マスクの正しい着用を巡って、試験監督者の指示に従わなかったなどの不正行為が確認されたが、大きなトラブルもなく終了した。
最大の注目点はコロナ禍によって休校を余儀なくされ、受験準備不足の中で、「思考力」「判断力」「表現力」がより重視される形に切り替わった新しい「共通テスト」で、どのような結果を残すことができるか――であった。
大学入試センターが1月22日に公表した「中間集計」の平均点は、“前年のセンター試験並み”となり、受験生はもちろん、大学入試センター、高校・予備校、大学等の入試関係者は胸をなでおろし、安堵したに違いない。入試センターは、目標の正解率50%を達成した格好だ。
入試直後は「難化」の予想が多かった
大学入試センターは「共通テスト」の導入に当たって、数度の試行試験を行ってきたが、結果は予想を下回るばかりで、本番を危惧する声が多かったのだ。
入試直後から、インターネット上で「問題分析」「内容特徴」「難易度」等の情報が流された。今回は「日常生活に関連した、資料を読み解きながら考える出題が多く、問題文の量が増えて、受験生の負担は増加」等の情報が多く、したがって「対前年で難化」の評価が目立った。
どの教科も平均点が下がり、「団子レースになったらエライこっちゃ」と心配したのだが、18日になって問題を解いてみた知人等からメールが届いた。「センター試験」の出題形式とは異なるが、「結構、解けていると思う」の声。
問題は難易を含めたバランスが大事
入学試験では、受験者の成績が正規分布になるのが望ましいのだが、なかなか理想のグラフにはならない。極端なことを言えば、入試では受験生の全員が満点でも、0点でも困るのだ。受験生の得点分布によって、タテ席が明確になることで、合否判定が可能になるからである。
それは入試問題の難易によって決まる。各問題が良問揃いでも、入試にとってベターかどうかは別問題。入試では、難易を含めた全体のバランスが重要になる。
例えば、一般的に入試問題を難化させるには、①問題の量を多くする(センター試験方式:制限時間内で、正解を導き記入することが容易でない)、②問題の内容を高度にする(難関大の2次試験方式:記述式の解答に時間を要する)、③問題に正解をなくする(「正解なし」に辿り着くまでに、時間を要する)などの方法がある。
「英数国」の平均点は前年並みだった
大学入試センターが22日に公表した「平均点」(中間集計その2:受験者数48万2381人)のデータと前年度「センター試験結果」とを比較。(表記:21年平均点←20年平均点の順)
*国語 21年117.51点←20年119.33点 *数学①数学Ⅰ・A 21年57.68点←20年51.88点、数学②数学Ⅱ・B 21年59.93点←20年49.03点 *英語(リーディング)21年58.81点←20年58.15点、英語(リスニング)21年56.16点←20年57.56点
国語は大差なし、数学Ⅰ・Aは5.8点UP、数学Ⅱ・Bは10.9点UPで数学は前年より易化、英語はリーディング、リスニングとも横ばい。
また、得点調整は同じ教科で指定された科目間の平均点差が20点以上ある時に行うが、21年は6年ぶりに、公民の「現代社会」「倫理」「政治・経済」の3科目間と、理科②の「物理」「化学」「生物」の3科目間で得点が調整される。
「共通テスト」の対策法が見えてきた!!
国語の現代文では、複数の資料を読み、引用・批評する必要があった。古文や漢文でも、複数の文章を読んで答えさせる問題が出た。
英語も、多様な英文資料から内容を読み取る力が必要になった。問題文の語数も約5400語となり、前年より4割も増えた。他の科目も同様であり、22年度の対策法が見えてきた。
共通テストの「昨年並みの結果」を受けて、合否判定に自信を得た一部の国立大が、コロナ禍を理由に2次試験を急遽中止すると公表した。これに対し、文科省は2次での逆転を期待する受験生に、不利益を与える恐れがあると、選抜方法の大きな変更に検討を求めた。